岸の穴を埋めるのは…
「投手が重要」。西武の辻発彦監督は繰り返す。
長年、西武の先発陣を引っ張ってきたエース・岸孝之がFAで楽天に移籍。その穴を埋めることがチームにとって今季最大の課題と言ってもいい。
昨季、チームで唯一規定投球回に達し、自身初の二ケタ勝利をマーク(12勝)した左腕・菊池雄星、新人ながら7勝をマークした多和田真三郎がその筆頭候補となるが、同じく大きな期待を寄せられている若獅子がいる。
サッカー日本代表FWと同姓同名ということで入団時から注目を集めている2年目右腕・本田圭佑だ。
今季の春季キャンプで初のA班(一軍)スタート。岸と同じ東北学院大出身でもある若獅子は、「こういう状況なので、抜け出せばチャンス。意識を持ってやっていきたい」と宣言した。
U23W杯で見せた“MVP”級の活躍
本田への注目度が高まったのは昨年11月に開催された『第1回 WBSC U-23ワールドカップ』だった。
U23日本代表に選ばれた本田は、開幕戦のニカラグア戦に先発。7回2安打無失点と好投し、チームの白星スタートに貢献した。スーパーラウンド初戦の韓国戦では、ソロを被弾して失点を喫するも、8回127球を投げて4安打1失点12奪三振の力投。チームの勝利へとつないだ。
さらに、オーストラリアとの決勝戦では、中継ぎとして1点リードの6回からマウンドに。韓国戦から中2日での登板だったにもかかわらず、2回無安打無失点5奪三振と安定した投球を披露し、チームを優勝に導いた。
3試合に登板し1失点と“MVP級”の活躍を見せた本田は、若侍のエースとして一躍その名を売った。
今季は“真っ直ぐ”を磨く
また、豪州での武者修行も本田を成長させた。
本田は、同学年の左腕・野田昇吾、今季から捕手に転向する駒月仁人と11月中旬から、豪州でのウインターリーグに参加。約1カ月間、投球術に磨きをかけた。
「カーブは通用することがわかった」。手応えとともに「真っ直ぐを磨く」という新たなテーマも見つかった。
年明け、西武第二球場での自主トレでは、指先の力を強くするために中投や遠投を繰り返した。寮の自室にいるときも常にボールに触り、指先を鍛えていたという。
技術だけではない。「強い気持ち」も豪州で身に付けた。「インコースに投げ込んでいけた。当てちゃいけないという気持ちをなくして強気で投げることが大事」と自信に満ちた表情をのぞかせた。
“コミュニケーション”という部分でも成長した。あまり口数が多い方ではないが、豪州では積極的にチームメイトと交流。「英語は全くできないんですけど」と苦笑いも、「(豪州では)自分から話しかけたりしました。ライオンズでもこれから外国人選手に話しかけていこうと思います」と頼もしかった。
心身ともに成長 プロ初勝利を
今オフは3キロ増の80キロ。「特に(体重を)増やそうと意識したわけではなく自然と。ウエイトの成果かな。食べる量も増えました」と明かす。「キャンプでもう少し絞れると思うので、今すごく良い状態です」。初の一軍キャンプへしっかりと照準を合わせた。
「若い投手が出てきてくれないと」。辻監督は言う。3年連続Bクラスからの脱却、そして9年ぶりのリーグ優勝へ、若手の台頭が必要とされている。
心身ともに成長した23歳。期待の若獅子が「開幕ローテ」そして「まず1勝」を全力でつかみ獲りにいく。