ニュース 2017.02.15. 07:45

優勝への近道は“勝利の方程式”の確立!?

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広島の勝ちパターンを担ったジャクソン(左)と中崎翔太(右)

救援陣の出来が重要!?


 リーグ優勝するためには、リリーフ陣の出来がカギを握るといっても過言ではないだろう。

 この2年間、セ・リーグを制した15年のヤクルト、16年の広島、パ・リーグを制した15年のソフトバンク、16年の日本ハムはいずれも救援防御率リーグトップを記録している。

 この4球団は、勝利の方程式が確立されており、多くの試合で勝ちを拾ってきた。では、最近5年間のリーグ優勝した球団のセットアッパー、守護神はどのような成績を残していたのだろうか…

2012年

・巨人
救援防御率:1.75(リーグ1位)
<セットアッパー>
山口鉄也 72試 3勝2敗44H 5S 防0.84
<クローザー>
西村健太朗 69試 3勝2敗12H 32S 防1.14

 09年以来となるリーグ優勝を達成した巨人。この年の巨人は、セットアッパーの山口鉄也がリーグ最多の72試合に登板して、3勝2敗44ホールド、防御率0.84と抜群の安定感を誇った。47ホールドポイントはリーグトップの記録で、最優秀中継ぎ投手のタイトルを獲得した。

 クローザーはこの年から本格的に抑えに挑戦した西村健太朗。6月末にマシソンが守護神を務めたことで、一時的にセットアッパーに配置転換となったが、マシソンが故障で離脱した後は再び抑えに復帰。リーグ3位の32セーブを記録し、防御率は1.14だった。

 この年は山口、西村だけでなく、50試合に登板して防御率1.61を記録した福田聡志、40試合の登板で防御率1.44の高木康成、10セーブを記録したマシソンとリリーフ陣が充実していた。

・日本ハム
救援防御率:3.21(リーグ4位)
<セットアッパー>
宮西尚生 66試 2勝2敗 39H 0S 防2.25
増井浩俊 73試 5勝5敗 45H 7S 防2.76
<クローザー>
武田 久 56試 4勝4敗 3H 32S 防2.32

 セットアッパー・増井浩俊が最優秀中継ぎ投手、クローザー・武田久が最多セーブのタイトルを獲得し、リーグ優勝に大きく貢献した。

 増井は抑えの武田久が故障で離脱したときに一時的に守護神を任されたが、主に勝ち試合の8回を任された。シーズン終盤に疲れからか打たれるシーンもあったが、ホールドポイントはパ・リーグ新記録となる50HPを記録した。

 前年セーブ王の武田久は、開幕から成績不振、さらに故障で離脱するなど、5月終了時点で1勝1敗7セーブ、防御率5.91と精彩を欠いた。6月以降は調子を取り戻し、9月には14試合に登板して、11セーブ、防御率0.66をマーク。最終的にはリーグ最多の32セーブを記録し、2年連続の最多セーブのタイトルを獲得した。

 勝ち試合の7回を任されることが多かった宮西尚生も、リーグ3位の39ホールドを記録するなど、“勝利の方程式”が確立されていた。

2013年

・巨人
救援防御率:2.57(リーグ1位)
<セットアッパー>
山口鉄也 64試 4勝3敗 38H 6S 防1.22
マシソン 63試 2勝2敗 40H 0S 防1.03
<クローザー>
西村健太朗 71試 4勝3敗 10H 42S 防1.13

 山口、マシソン、西村の3人の名前を取った“スコット鉄太朗”が、リーグ優勝の立役者となった。マシソンと山口が最優秀中継ぎ投手、西村が最多セーブのタイトルを獲得。同一球団のリリーフ投手が3人同時に個人タイトルを獲得するのは、史上初の快挙となった。

 前年のリーグ優勝時も山口、西村の勝利の方程式が確立されていたが、そこにマシソンが加わった。開幕から勝ちパターンの一角に組み込まれたマシソンは、6月(8試合に登板)と8月(12試合に登板)の月間防御率が0.00。シーズンの防御率は63試合に登板して、防御率1.03と150キロを超える速球を武器にセ・リーグの強打者たちをねじ伏せた。

 守護神の西村は、球団新記録となる42セーブを記録。さらに、2年連続で防御率1点台を記録するなど好成績を残した。ただ、楽天との日本シリーズでは敗戦投手になるなど、勝負所で不安定な部分をのぞかせた。
 
・楽天
救援防御率:3.85(リーグ5位)
<セットアッパー>
青山浩二 60試 3勝5敗 17H 11S 防3.43
<クローザー>
ラズナー 37試 1勝2敗 3H 17S 防3.35

 楽天はこの年、球団初のリーグ優勝、日本一に輝いた。先発陣は24勝0敗の田中将大、新人ながら1年目に15勝を挙げた則本昂大などがいたが、リリーフ陣は苦戦した印象だ。

 春先は青山浩二が抑えを務めていたが、5月12日のロッテ戦から3試合連続で失点したこともあり配置転換。青山に代わって抑えを任されたのがラズナーだった。5月19日のヤクルト戦で初セーブをマークすると、その後もセーブを積み重ね、17セーブを挙げた。ただラズナーも、6月と9月の月間防御率が5点台以上と苦しんだ。

 “勝利の方程式”の構築に苦戦したが、左の長谷部康平、金刃憲人、右の小山伸一郎、斎藤隆など良い働きを見せた。

2014年

・巨人
救援防御率:4.01(リーグ4位)
<セットアッパー>
山口 鉄也 60試 4勝3敗35H 2S 防3.04
西村健太朗 49試 4勝4敗16H 6S 防2.98
<クローザー>
マシソン 64試 6勝6敗 8H 30S 防3.58

 前年抜群の安定感を誇った“スコット鉄太朗”だったが、14年は3人とも前年のような活躍を見せる事ができなかった。

 13年セーブ王の西村は、開幕から抑え失敗が目立ち、4月後半からマシソンが抑えに配置転換。そのマシソンも3・4月防御率7.07と精彩を欠いたが、抑えに転向すると状態を取り戻し、5月は9試合に登板して月間防御率0.00。6月以降は失点する場面が多かったが、30セーブを記録した。

 長年巨人のリリーフを支えた山口は、4月27日の広島戦でエルドレッドにサヨナラ本塁打を浴びるなど、3・4月の防御率は10.29と苦しんだ。5月以降は調子を取り戻したが、12年、13年のような圧倒したピッチングを見せることができなかった。

・ソフトバンク
救援防御率:2.38(リーグ1位)
<セットアッパー>
五十嵐亮太 63試 1勝3敗 44H 2S 防1.52
<クローザー>
サファテ 64試 7勝1敗 7H 37S 防1.05

 チーム救援防御率リーグトップの2.38を記録したソフトバンク。

 セットアッパー・五十嵐亮太は9月に月間防御率6.23を記録したが、4月12日のオリックス戦から6月1日のヤクルト戦にかけて17試合連続無失点を記録。若手時代は150キロを超えるストレートを武器に抑えていたが、ソフトバンク移籍後はアメリカ時代に覚えたナックルカーブを駆使した投球が光った。

 この年、西武から移籍してきたサファテは、リーグ2位の37セーブを挙げた。広島、西武時代にも抑えを務めていたが、シーズン途中に安定感を欠き、セットアッパーに配置転換するということが度々あった。新天地のソフトバンクでは不安定さが解消され、シーズンを通して安定した投球をみせた。

 その他にも、森福允彦、森唯斗、岡島秀樹など、他球団では勝ちパターンを務めてもおかしくないリリーフ陣が揃っていた。

2015年

・ヤクルト
救援防御率:2.67(リーグ1位)
<セットアッパー>
オンドルセク 72試 5勝2敗33H 0S 防2.05
<クローザー>
バーネット 59試 3勝1敗 6H 41S 防1.29

 前年救援防御率リーグワーストの4.58だったが、リーグ優勝した15年はリーグトップの2.67を記録。リリーフ陣の整備が、混戦のセ・リーグを制したといっても過言ではないだろう。

 不振が続いていたバーネットが1年間、抑えとして機能し、リーグ最多の41セーブを記録。バーネットの前に投げる8回も、新外国人のオンドルセクを固定できたのも大きい。

 また8回オンドルセクの前を投げる投手も充実していた。リーグ最多の74試合に登板した秋吉亮はイニング跨ぎをこなし、左の久古健太郎はワンポイント、ロマンはチーム事情で先発・リリーフの両方を務めるなど、バラエティに富んでいた。

・ソフトバンク
救援防御率:2.81(リーグ1位)
<セットアッパー>
五十嵐亮太 54試 3勝1敗 31H 2S 防1.38
<クローザー>
サファテ 65試 5勝1敗 9H 41S 防1.11

 リーグ2連覇を達成したソフトバンクは、15年も勝ちパターンがしっかりしていた。

 春先は故障で出遅れた五十嵐に代わり、バリオスが勝ち試合の8回を務めた。バリオスは開幕から17試合連続ホールドを記録する活躍を見せていたが、5月に入ると失点する場面が目立ち、前年セットアッパーを任された五十嵐が再び8回を担った。

 五十嵐は登板数とホールド数が前年を下回ったが、防御率は1.38を記録。4月21日の楽天戦から6月7日の巨人戦にかけて19試合連続無失点に抑えた。

 パ・リーグ新記録(当時)となる41セーブをマークした守護神のサファテは、プロ野球新記録の43イニング連続奪三振を記録。抑え投手でありながら、奪三振数は100を超え、奪三振率は14.20をマークした。

2016年

・広島
救援防御率:3.04(リーグ1位)
<セットアッパー>
ジャクソン 67試 5勝4敗 37H 0S 防1.71
<クローザー>
中崎翔太 61試 3勝4敗 7H 34S 防1.32

 前年優勝候補に挙げられながら、勝ちパターンのリリーフ陣の安定感が欠き、優勝どころかクライマックスシリーズ進出を逃した。前年の反省からかジャクソン、ヘーゲンズの救援陣をオフに獲得。前年の途中から抑えとなった中崎翔太は、引き続き抑えを任された。

 新外国人のジャクソンは開幕から守護神・中崎の前を投げるセットアッパーとして、67試合に登板。課題だった8回の男の穴を埋めた。抑え2年目の中崎も、開幕から抜群の安定感をみせ、34セーブ、防御率1.32を記録した。

 また、今村猛の復活も大きかった。シーズン序盤はロングリリーフやビハインドゲームでの登板が多かったが、ヘーゲンズが先発に転向してから勝ち試合の7回に固定。シーズン終盤は大事な7回で、見事な火消しをみせていた。

・日本ハム
救援防御率:2.67(リーグ1位)
<セットアッパー>
宮西尚生 58試 3勝1敗 39H 2S 防1.52
谷元圭介 58試 3勝2敗 28H 3S 防2.32
<クローザー>
マーティン 52試 2勝0敗 19H 21S 防1.07

 抑えの増井浩俊が開幕から失敗が目立ち、シーズン終盤には増井に代わり抑えを務めたマーティンが故障。救援陣に苦戦した印象があるが、救援防御率はリーグトップの2.67を記録した。

 中でも、セットアッパーの谷元圭介、宮西尚生の存在は絶大だった。前年までロングリリーフ、勝ち試合のリリーフなど様々な役割をこなした谷元はこの年、勝ちゲームのリリーフを中心に58試合に登板。マーティンが故障したシーズン終盤には、一時的にクローザーを務めた。

 9年連続50試合を登板した宮西は、自身初となる最優秀中継ぎ投手のタイトルを獲得。初登板となった4月9日の楽天戦で2失点を喫したが、4月12日のオリックス戦から29試合連続無失点。この2人の活躍がなければ、大逆転優勝達成もできなかっただろう。


 このように近年はセットアッパー、クローザーを固定できているチームがリーグ優勝を達成している。投手分業制となった現代野球では、1点を守り切ることがいかに重要かがわかる。勝ちパターンのリリーフを構築することが、優勝への近道といえそうだ。
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