昨年11月に行われた強化試合のときの日本代表

◆ 13年のWBCでは90年代生まれが1人

 気が付けば、第4回WBC開幕まで2週間。そして東京五輪まであと3年である。

 プロ野球のペナントレースでいえば、2020年まで残り4シーズン。プロスポーツ界において4シーズンという時間は大きい。2013年春に開催された第3回WBCの日本代表メンバーを確認してみると、投手陣の中心には広島・前田健太(現ドジャース)と楽天・田中将大(現ヤンキース)がいて、涌井秀章(現ロッテ)は西武、森福允彦(現巨人)はまだソフトバンク所属だった。

 野手陣でも日本ハム・稲葉篤紀や中日・井端弘和はすでに現役引退。山本ジャパンに90年代生まれ選手は今村猛(広島)の1人のみだったのが、4年後の小久保ジャパンはなんと28名中11名が90年代生まれの選手だ。

 今思えば、現在の代表チームで主力投手として期待の懸かる菅野智之(巨人)、則本昂大(楽天)、藤浪晋太郎(阪神)、そして右足首の故障で出場辞退となった大谷翔平(日本ハム)らがプロのキャリアをスタートさせたのが、前回WBCが行われた2013年シーズンである。

 例えば4年前、広島の18歳ルーキー鈴木誠也が外野手として次回のWBC日本代表に選出されると誰が想像しただろうか? つまり、2020年の東京五輪でも17年の新人選手たちが代表に選ばれる可能性は充分にあるということだ。

◆ 大谷、則本はメジャー移籍濃厚?

 気が早いと思われるかもしれないが、今回は2020年の東京五輪に臨む侍ジャパンメンバーを予想してみよう。

 やはり、まず考えなければならないのはNPB主力選手たちのメジャー移籍問題だろう。前述の12年ドラフト組は、20年にはプロ8年目のシーズンを迎えている。現行制度のままならば国内FA権取得が話題になる頃だ。

 メジャー志向を公言している大谷や則本は、同チームの先輩ダルビッシュ有や田中将大の例を見ても、ポスティング制度でのメジャー移籍濃厚ではないか。そうなると代表選出は難しい。

 対照的に菅野や藤浪が所属する巨人と阪神は、現状ポスティング制度での移籍を認めていない。20年8月には菅野30歳、藤浪26歳と全盛期を迎えているはずだ。

 ソフトバンク93年組コンビの武田翔太、千賀滉大、そしてドラ1ルーキー田中正義を含めた右腕トリオも3年後は皆20代中盤、代表でも中心選手としての働きが求められる。

 さらに松井裕樹(楽天)が前回WBC時にまだ高校生だったことを考えると、小笠原慎之介(中日)、高橋光成(西武)、藤平尚真(楽天)といった若手投手たちが2020年の侍ジャパン主軸投手へと成長している可能性もゼロではないだろう。

◆ 捕手は田村に期待

 捕手は今大会でも代表入りを推す声の多かった田村龍弘(ロッテ)が中心か。昨季6月には月間MVPも獲得した現在の12球団最年少正捕手。大谷翔平や藤浪とはプロ入り同期の同い年とまだまだ伸び代が期待できる。

 もちろん打てる捕手冬の時代の救世主として森友哉(西武)にも注目が集まる。20年には25歳になっている森はいったいどんなキャッチャーに成長しているだろうか?

◆ 野手陣はメジャー移籍問題が影響も

 しかし、野手陣もやはりメジャー移籍問題がメンバー構成に大きく影響しそうだ。20年シーズンにはプロ10年目を迎える山田哲人(ヤクルト)、そして11年目の筒香嘉智(DeNA)。東京五輪時はともに28歳。17年現在、ふたりともすでに年俸3億円を超えており、このままのペースで活躍し続けたら日本球界に留まっているかは微妙なところだ。ちなみにあの松井秀喜が巨人からヤンキースへ移籍したのも、28歳の時だった。

 仮に山田と筒香が選出できなかった場合、クリーンナップは、3年後に31歳の中田翔(日本ハム)、恐らくリーグを代表するバッターに君臨している神ってる8年目鈴木誠也(広島)、昨オフの台湾ウインターリーグで五冠王とレベルの違う活躍を見せた「新アジアの大砲」吉田正尚(オリックス)に次代の日本の主砲として期待が懸かる。

 加えて、昨季高卒新人ながらも三浦大輔(DeNA)の引退試合で豪快な初打席初本塁打を放った広岡大志(ヤクルト)。仮に進学せずにプロ入りしていたら超高校級スラッガー清宮幸太郎(早実)らも当然候補のひとりだ。何かと注目度の高い、オコエ瑠偉(楽天)の成長も楽しみである。

 ちなみにあのイチローは20年夏には46歳。若い頃は五輪参加に否定的なコメントもしていたが、日本人なら誰もが顔を知っている天才バッターが東京五輪に参加したら、世の中の野球に対する注目は一気に上がる。テレビ視聴率や興行面でも大きなプラスになるはずだ。果たして、その頃のイチローはどこの国でプレーしているのだろうか…。

 そして、自国開催の五輪で指揮を執るのはそのまま小久保監督か? それとも世界一の実績を誇り、現在フリーの原辰徳が戻って来るのか? まさかのゴジラ松井秀喜か? もしかしたら、最も未来予想が難しいのは代表監督の人選なのかもしれない。

【2020年東京五輪侍ジャパン予想】
1 オコエ瑠偉 中堅(楽天/23歳)
2 菊池涼介 二塁(広島/30歳)
3 鈴木誠也 右翼(広島/26歳)
4 吉田正尚 左翼(オリックス/27歳)
5 中田翔  DH(日本ハム/31歳)
6 坂本勇人 遊撃(巨人/31歳)
7 清宮幸太郎 一塁(早実/21歳)
8 広岡大志  三塁 (ヤクルト/23歳)
9 田村龍弘 捕手(ロッテ/26歳)
P 菅野智之(巨人/30歳)
監督 ?
※所属は2017年現在、年齢は2020年8月

文=中溝康隆(なかみぞ・やすたか)

【中溝康隆・プロフィール】 1979年埼玉県生まれ。大阪芸術大学映像学科卒。デザイナーとして活動する傍ら、2010年よりブログ「プロ野球死亡遊戯」を開始。累計6400万PVを記録し話題に。2015年には初の単行本「プロ野球死亡遊戯 そのブログ、凶暴につき」(ユーキャン)を上梓。2016年3月25日には著書「プロ野球死亡遊戯 さらば昭和のプロ野球」(ユーキャン)と「隣のアイツは年俸1億 巨人2軍のリアル」(白泉社)が2冊同時発売された。

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中溝康隆

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