若返りを図るチームの中で
沖縄・セルラースタジアム那覇で汗を流している高橋由伸監督率いる巨人軍。覇権奪回が何よりの目標となる今季、総額30億円超とも言われる超大型補強でその下準備を整えた。
大幅な血の入れ替えでチーム再建を図るなか、一軍キャンプの顔ぶれを見てみると若手が主体となっており、世代交代の色もうかがい知ることができる。岡本和真や山本泰寛、重信慎之介、柿沢貴裕、辻東倫、吉川大幾などなど...20代前半の選手たちに寄せる期待は高い。
他球団では主軸を担えるであろう選手でも、こと巨人軍の中では熾烈な序列競争の中で、不遇の時間を余儀なくされているケースが散見される。ただし、過去を振り返れば必ずしもエリートの寄せ集めだけでチームが成功を収めたとは言い難い。
例えば、脇谷亮太や松本哲也といった今や中堅からベテランに位置する名脇役たちが随所で輝きを放ち、チームの躍進に貢献してきたことは記憶に新しい。昨シーズンで引退した「神の足」を持つ鈴木尚広がそうであったように、一芸に秀でた“雑草魂”を持つ選手たちがスパイスとなり、化学反応を起こしたチームが成熟を遂げてきたのだ。
「転んでも起き上がれ」
新たなチームビルディングを模索する由伸巨人において、脇谷亮太や松本哲也は二軍スタートを余儀なくされている。原監督時代に名バイプレーヤーとして活躍し、一軍の常連として顔を揃えてきた選手なだけに、厳しい現状にはいちファンとして気が揉んでならないが、そこは勝負の世界。彼らの力で再び返り咲くことを願ってやまない。
南アフリカ共和国の政治家であり、アパルトヘイトの撤廃に尽力した功績でノーベル平和賞を受賞したことでも名高いネルソン・マンデラは、「生きるうえで最も偉大な栄光は、決して転ばないことにあるのではない。転ぶたびに起き上がり続けることにある」という言葉を残した。
脇谷にしても、松本にしても、決してエリート街道を歩いてきた選手ではない。むしろ大怪我で戦線離脱を余儀なくされるなど、常に逆境に立ち向かってきた選手たちだ。
円熟味の増す30代前半〜後半にかけての理想とするキャリアパスは、チームの屋台骨を支える中堅選手としてポジションを確立すること。これがチームにとっても、選手とにとっても望ましいはずであるが、そこは天下の巨人軍。日本球界きっての厳しい競争原理がはたらく世界において、泣き言は通用しない。
ポジションは用意されるのではなく、掴みに行くもの。ネルソン・マンデラが言うように、彼らには「転ぶたびに起き上がる」姿を見せてほしい。