衝撃与えた恐怖の“大王”
侍ジャパンの先発・則本昂大が思わずうなだれた。
28日に福岡ヤフオク!ドームで行われた侍ジャパン壮行試合。2-1とリードして迎えた3回表、一死一塁の場面で打席に入ったCPBL選抜の3番打者・王柏融は、甘く入った変化球をフルスイング。打球は背走するセンター・秋山翔吾の頭上を越え、バックスクリーンに消える逆転ツーランホームランとなった。
勝ち越してもらった直後の逆転弾。ベースを一周する王柏融を尻目に、マウンド上で表情を変えずに汗をぬぐった則本だったが、心中穏やかでなかっただろう。
「台湾で打率4割を記録した強打者」。王柏融の前評判は決して低くはなかったものの、どこかで“よその国”の話だと思っていた部分は否めない。打者有利の印象が強い台湾リーグでの記録ということもあり、この男をピックアップして紹介するものもそれほど出ていなかった。
しかし、今回の活躍ぶりには多くの野球ファンが心を動かされた。2試合通して5打数4安打、本塁打1に打点が3つ。「今すぐほしい!」と贔屓チームへの入団を熱望するコメントも見られるほどだった。
輝かしい球歴
まだ23歳と若く、プロ2年目のシーズンを終えたばかりという王柏融。とはいえ、台湾ではドラフトを6月に行い、9月からの入団となるため、1年目は29試合しか出場していない。
その短い期間でも3割を超す高打率をマークして注目を集めると、“実質1年目”の2016年に大ブレイク。台湾球界初となる200本安打を達成し、驚異の打率.414を記録した。
もともとアマチュア時代から活躍していた選手で、2014年に開かれた第1回21Uワールドカップでは4番を任された。この大会では日本と2度に渡って戦い、計8打数4安打3打点の活躍。チームを初代王者へと導いている。
アマ時代の輝かしい実績を引っさげ、2015年6月のドラフトでLamigoモンキーズに1位入団。この時の契約金は、リーグの新人野手としては最高タイとなる500万台湾ドル(約1860万円)だった。
9月からチームに加入すると、29試合で打率.324(111-36)で9本塁打の好成績を記録。さらにNPBで言うところの日本シリーズにあたる台湾シリーズでも“大王旋風”は止まらず、チームの連覇に貢献して優秀選手賞を受賞している。
大記録の達成へ...
大きな期待を受けて迎えた2016年、男の才能はさらに開花。4月中旬に打率を4割にのせると、最終的には.414でシーズンを終えて史上最高打率をマーク。シーズン安打も200本の大台に乗せ、新記録を樹立した。
終わってみれば首位打者、最多安打、ゴールデングラブ賞、ベストナイン、新人王にリーグMVPと一気に6つのタイトルを獲得。オフには5年総額3180万台湾ドル(約1億1800万円)という長期契約を結び、まさにスターダムを駆け上がっている。
そしてこの春、日本を代表する投手たちを相手にこの大暴れ。複雑な内部事情によりWBCには参戦することができない中、国外へ向けて多大な爪痕を残した。
近い将来のNPB入り、もしくはメジャー挑戦も...?“台湾の大王”こと王柏融、この名前は覚えておいたほうがよさそうだ。