本職で復調の気配
1日に福岡で行われた侍ジャパンの壮行試合。圧勝劇の口火を切ったのは、切り込み隊長の一撃だった。
1回表。先頭で打席に立った山田哲人は、2球目の甘く入った変化球をフルスイング。打球はスタンドからせり出したヤフオク名物『ダグアウトテラス』の中にライナーで飛び込んだ。
「普段はDHではないので、セカンドのほうがリズム良く(試合に)入れる」。二塁手としてスタメンに名を連ねた男は、このように語っている。
本塁打に関しては1回表の第1打席ということもあり、厳密に言えばまだ守備には就いていなかったのだが、二塁手として試合に臨むという心もちがいきなりバットに作用したということも考えられる。
山田哲人どこで使うか問題
しかし、こうなってくると問題も浮上する。山田を“どうやって使うか”だ。
そもそもなぜ山田が指名打者で出場していたのかというと、山田のライバルとなる二塁手・菊池涼介が絶好調だったから。オープニングマッチからの2試合で計8打数6安打、2打点の大当たり。チームが連敗するなか、まさに孤軍奮闘で存在感を発揮していた。
みなさんご存知の通り菊池には守備という大きな武器があり、これで打てるとなれば使わないわけにはいかない。
そういった経緯もあって指名打者として出場していた山田だが、前述のコメントにもあったように守備からリズムを作ることができなくなるため、バットの方にも悪影響が出てしまうというシーンが見受けられた。
サンプル数こそ少ないが、小久保ジャパン発足以降の対外試合で「指名打者」に入った時の成績を見ると、12打数2安打の打率.167、本塁打は0という数字になっている。
ところがこれが「二塁」の時を見ると、50打数の14安打で打率は.280。本塁打も3とやはり数字が良くなった。そもそもの機会に大きな差があるとはいえ、山田が語った感覚と結果は一致している。
守備に就かせるとなると...?
では、「二塁」でも「指名打者」でもないポジションという可能性はどうだろうか。
山田と菊池の選択という問題はかねてより挙がっており、2014年に行われた日米野球の時には山田が一塁に回ったり、三塁に挑戦したりといった一幕もあった。
しかし、昨オフに行われた侍ジャパン強化試合でのこと。テストで三塁に入った山田は送球エラーを犯すなど、特に送球の面で不安を露呈。本人から弱気な言葉が漏れたこともあり、この構想は立ち消えとなる。
実際に今年の1月、小久保裕紀監督はWBCの登録メンバーを発表した際に「山田は二塁一本」と起用法を明言している。それだけに、直前コンバートという可能性は限りなく低いだろう。
指揮官の決断は...
そうなると、残された道は“併用不可”ということになってくる。いやむしろ、現時点ではそれが最善策なのではないか。
当初の小久保監督の構想通り、二塁のメインは山田。菊池には複数ポジションにわたる内野のバックアップ及び攻撃の切り札的存在として控えてもらう形である。
山田と菊池の併用における最大の問題点が、二塁のバックアップ不足。2人にもしものことがあった場合、二塁を託すとしたら無理やり田中広輔を配置するくらいしか道がなくなってしまうのだ。
短期決戦に“二軍”は存在しておらず、常に限られた人数の中でのやりくり。オープニングマッチで内川聖一のアクシデントを目の当たりにしている後だけに、そうした不安は少しでも排除しておきたいところだろう。
開幕を目前に控えての嬉しい悲鳴、指揮官はどのような決断を下すのか。小久保監督の傭兵術に注目が集まる。
※【お詫び】
初出時に山田選手の指名打者出場時の成績を『10打数2安打』と掲載致しましたが、正しくは『12打数2安打』でした。訂正してお詫び申し上げます。