◆ 雰囲気を変えた一発
出遅れたラッキーボーイが不安を振り払う一振りを見せた。
3月5日、京セラドーム大阪で行われた侍ジャパンの強化試合。2点ビハインドで迎えた2回表、無死二、三塁のチャンスで打席には7番の鈴木誠也が入る。
1ボールからの2球目。オリックスの2年目右腕・近藤大亮が投じた外寄り高めの速球をフルスイングすると、高々と上がった打球はレフトスタンドへ。劣勢をひっくり返す逆転の3ランに、球場の雰囲気が一変した。
◆ 「また、あの男に…」
歓喜に沸く球場の中、対照的にライトスタンドは静まり返っていた。
「また、あの男に…」。オリックスファンの中で、“あの悪夢”を思い出した人は少なくなかっただろう。
さかのぼること約9カ月前…。6月17日から19日に行われた広島-オリックスの3連戦。真っ赤に染まったマツダスタジアムで主役になったのが、鈴木誠也だった。
まずは17日、4-4の同点で迎えた延長12回。無死二塁で打席に入った鈴木は、比嘉幹貴の変化球に体勢を崩されながらも食らいつくと、すくい上げた打球はレフトスタンドへ。サヨナラ2ランでチームを勝利に導く。
すると翌18日、今度は1-3と2点ビハインド出迎えた9回裏。一死一、三塁で鈴木に打席が回ってくる。
マウンドにはオリックスの守護神・平野佳寿。2ストライクと追い込まれながらも、甘く入ったボールを逃さず強振すると、左中間スタンドまで届く逆転サヨナラ3ラン。2試合連続のサヨナラ本塁打で、球場に歓喜をもたらした。
なおもミラクルは続き、19日の試合でも同点の8回に左腕・山崎福也からレフトスタンドへの勝ち越し弾。3試合連発、すべてが殊勲弾という大暴れで、チームを同一カードに導いた。
この大活躍を形容した“神ってる”という言葉は広島の快進撃を象徴する言葉となり、年末の流行語大賞も受賞。鈴木は広島の25年ぶり優勝と、日本中を巻き込んだカープ旋風の立役者となったのだった。
◆ 屈辱に耐え、逆襲を…
一方、やられた方にとっては悪夢でしかない。
広島の軌跡を取り上げる際にはこの3連戦抜きでは語れないとあって、何度となく同じシーンが使われた。地獄に叩き落された瞬間が繰り返し流され、これらのシーンが“トラウマ”として刷り込まれているオリックスファンも多くいることだろう。
そして迎えた3月5日。日の丸を背負って再び猛牛軍団の前に立ちはだかった男の一振りは、ファンのカサブタを無残に剥がしとった。
広島での悪夢が蘇る、大阪での一撃…。昨季は3試合で計6安打・3本塁打を許した天敵に、またしてもやられてしまった。
今年の再戦は、6月13日から15日。場所は初戦を三次で戦ったあと因縁のマツダで2試合を行うことになっている。
交流戦こそ、鈴木誠也を黙らせろ――。再び屈辱を味わったオリックスの逆襲に期待したい。
◆ 鈴木誠也vsオリックス
<2016年>
・6月17日(金)
1. 中安
2. 左ニ
3. 左飛
4. 三振
5. ニゴロ
6. 左本(+2)
・6月18日(土)
1. ニ飛
2. 三振
3. 左飛
4. 左本(+3)
・6月19日(日)
1. 中安
2. 中飛
3. ニ飛
4. 左本(+1)
――――――
[通算] 率.429(14-6) 本3 点6
<2017年>
・6月13日(火) 三次
・6月14日(水) マツダ
・6月15日(木) マツダ