ニュース 2017.03.07. 14:10

【相手国を突撃!】「WBCの時には国が止まる」~大使館インタビュー・キューバ編~

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 6日に開幕した『第4回 ワールド・ベースボール・クラシック』。王者奪還を目指す侍ジャパンだが、その前には数多くの強敵が待ち構える。

 そこで今回は、編集部の面々が“敵情視察”と銘打って、WBC参加国……の大使館にインタビューを敢行。第1回目となる今回は、日本の1次ラウンド最大のライバルであり、初戦の相手でもあるキューバを紹介します。

 インタビューに応じてくれたのは、なんとキューバ大使館のカルロス・M・ペレイラ特命全権大使!まさか大使自らとは驚きましたが、 気さくで陽気な大使が母国・キューバを熱く、熱く語ってくれました。


カルロス・M・ペレイラ特命全権大使


――まずキューバという国はひと言で言うとどういった国なのでしょうか?
大使 一言というのは難しいですね。あえて言えば“尊厳の国”。尊厳を大切にする小さな島国です。ただ、90マイル(約144キロ)先にはアメリカがある。そういう近いところにずっと抵抗し続けて、尊厳を守り続けて、偉大な文化を育てた国です。

ちなみに、スペインがキューバを発見してから歴史が始まったと言われますが、本当の歴史はもっと前からあります。先住民がいて、スペインの植民地時代にほぼ根絶やしになってしまったんですが、その後アフリカから黒人奴隷を連れてきた。奴隷制が禁止になると、今度は労働力として中国人がやってきた。ということで、色んな民族がミックスされた、混合してキューバという国ができているんです。日本からも移民がいってますよ。

――日本との関係はどのくらい前からですか?
大使 400年前から始まっています。支倉常長(はせくらつねなが)のローマ使節がキューバを通って、ヨーロッパにいっているんです。侍ですね。支倉常長が日本人第一号です。その後、日本からの移民に稲作などを教えてもらい、それが経済の発展につながりました。


トロピカル=キューバ?!

――キューバを訪れた際に訪れるべき場所は?
大使 最近はキューバを訪れる日本人が増えていますが、皆さんに推薦したいのは、場所というより、人間。ぜひ、キューバ人といろんなところでコンタクトを取るようにしてください。キューバの一番の宝は人間です!

場所としては、旧ハバナ市街。歴史的なそのままの景観が残されているところです。そこでは古い文化がそのままみられますから、音楽もダンスも。ビーチも良いですよ。海の水があったかくて、澄んでいて綺麗です。


ビーチも綺麗

――色鮮やかな建造物のイメージがありますが、それは旧市街?
大使 旧ハバナ市街です。トロピカルの色というのがキューバの特徴です。


カラフルな旧ハバナ市街

大使 地方にいくとトリニダという町があるんですけど、昔からそのままの趣が残っているところ。これも非常にカラフルです。昔のコロニアル建築が残っているところ。そこもお勧めですね。サンティアゴデクーバという古い町もカラフルなコロニアル風の建築が残っています。カラーというのは我々の生活の一部になっている。本当にカラフルです。


実はモヒートは……

――オススメのキューバ料理
大使 文化と同じでルーツがいっぱいあります。色々な国の影響を受けていて、それがミックスされたのがキューバの文化であり、料理です。

有名な料理としたら『コングリ』。お米の料理で黒豆ご飯です。一番特徴的なキューバ料理で、どこでも出ます。あと、豚が多い。キューバ風の焼き豚とか。『ロパビエハ』というのは牛肉の料理なんですけれども、“ぼろきれ”という名前の料理。色々あります。飲み物では『モヒート』が一番有名。あとはラムコークの『クアリブレ』ですね。


モヒートはキューバの飲み物

――日本におススメのお店とかはあります?
大使 そんなに大きなお店ではないんですけど、『ボデギータ』というお店があります。あと『カフェ・デ・ラ・ヴィ―ダ』、『モヒート・マニア』。そんな風にいくつか小さいお店ですけれども、キューバ料理のお店があります。


楽天的な明るい性格が生む粘り強さ



――キューバの国民性、特徴を教えてください
大使 一言でいうと、キューバ人の特徴というのは明るい陽気。楽天的。どんな苦しい状況でも未来を見失わない。何とかなるという楽天的な明るい性格というのが一番の特徴。あとは、価値観を大切にするとか、原則を守るとか、文化を大切にするとか。良い意味の闘争心がある。スポーツでもそうです。キューバの旗の為に、どんなことがあっても頑張ろうという強い忠誠心、闘争心というのが野球も含めてスポーツ選手の特徴です。

スポーツはキューバにとって、エリートのものではない。革命後は国民誰もがスポーツをやる権利があるという政策の元で、非常に大衆的にすそ野が広くなりました。野球は国民的なスポーツで、野球に対する情熱っていうのはものすごい。国によってはサッカーの方が人気がありますけど、キューバはやっぱり野球です。

――野球が盛んになったのは?
大使 20世紀に入ってからでしょうかね。野球を組織的にやっていくようになって、人気スポーツになった。アメリカの大リーグで初めて黒人選手がプレーしたというのも、キューバ人が最初です。キューバ人がたくさん。『キューバンボーイズ』というチームもあったんですよ。

キューバからたくさん大リーグにいってました。ずーっと密接な関係があった。それが革命までです。革命後というのはアメリカが経済制裁、経済封鎖してしまったものですから、キューバ人がアメリカにいってプレーすることができなくなってしまった。アメリカでプレーするためには、キューバを非合法でも出ていかなければ、キューバに住んでいる限りはメジャーリーグでプレーできないわけです。

せっかく、キューバが力を入れて育ててきた選手、良い選手に育ったところでいなくなってしまう。政策的に向こうでそうやっているわけですから。だから、キューバの野球は最近、どうしても弱体化してしまっている。


MLBで活躍する世界最速のチャップマンもキューバの出身

――国内リーグの盛り上がりは?
大使 つい最近終わったナショナルリーグのシーズンが、10年ぶりくらいに素晴らしい内容でした。国民も期待を持って、キューバの野球が昔誇っていた権威と力を取り戻すことを望んでいます。

今回のWBCのチームは、大半が最近までカリビアンシリーズに出ていました。最終的に優勝できませんでしたけど、非常に良い成績だった。その大半の選手が今回のメンバーです。キューバ野球の再生を世界に見せる良いチャンスではないかと期待しています。

(WBCのメンバーには)知ってる選手もいるでしょう。ソフトバンクでプレーすることになったデスパイネ。巨人にいたセペダ。(ライデル)マルティネスという選手は、WBCが終わったら中日に入ります。若い選手で才能のある選手も入っています。(そういった選手は)見ればわかります。


シーズンを世界仕様に変更

――キューバの国内リーグは12月から4月くらいだったと思うのですが、今年は前倒ししたのですか?
大使 一時的にシーズンを変えたのではなくて、シーズンをフィックスすることにして、これは新しいカレンダーです。まずはナショナルリーグが終わって、カリブリーグにいく。カリブリーグが終わって、今年なんかは4年に1回ですけれども、WBCがあるというシーズンのカレンダーに変えました。

昔のままのカレンダーだといろんな国際試合と重なってしまうんです。WBCも含めて。今度の新しいカレンダーだとどこにも当たらなくて済む。新しいカレンダーだと国際的なサイクルにマッチしているので、選手としたらやりやすいはずです。


2月までカリブリーグでプレー

――そうなると、ちょうどシーズンが終わって良い状態の選手がそのまま日本にくるということですか?
大使 今回は、ずっと戦ってきたそのままのチームがきます。以前はまたチームを構成して、新しく練習して大会に臨むという形だったんですが、今回のチームには継続性があります。

ナショナルリーグで優勝したチームに補強したチームがカリブリーグに出て、そのカリブリーグのチームをさらに補強してWBCに連れてくる。監督も優勝チームの監督です。ナショナルリーグの優勝チームの監督。その監督がカリブリーグでも指揮し、その監督が采配を揮います。


野球は情熱の対象


――国内のWBCに向けた盛り上がり。関心高いですか?
大使 高いです。野球は国民的なスポーツで、みんなが情熱の対象にしている。大人気。野球の動きというのは即座に国民に反映されます。

WBCの時には国が止まります。ストップします。全てのことが。嘘みたいな話ですけれども、その期間というのはあまり公の行事を入れないんです。みんながみんな、上から下までWBCにくぎ付けになるから。日本にいてもそうです。(私たちも)毎試合いきます。全てのキューバの目が日本に注がれます。

日本のいろんな各界の人たちと会っているときもWBCの話題が出ますね。特に今回は一次ラウンドの初戦が日本とキューバなので。みんなが決勝戦が一番先に行われるみたいだと言っています(笑)。

――キューバ国内のメディアの方も来るんですか?
大使 たくさん来ます。報道陣がたくさん来ます。新聞、テレビ、ラジオ、全部来ますし、生放送されます。キューバにとっては国民的行事です。

――時差は?
大使 今の時期だと14時間です。

――試合はちょうど朝方になりませんか?
大使 朝の4時とか5時とか。まず、朝方に生放送があり、その後に再放送が昼間にある。でもみんなライブで見るんです。唯一、キューバが早起きしているのはその日ですね。


前回大会では日本に勝利

――前回日本に勝ってますが、今回自信は?
大使 私はチームを信頼してます。信頼というよりは確信。楽天的に考えています。今回のチームはやれそうだと。侍ジャパンが(昨年11月に)オランダと対戦した試合を見ました。大谷選手のケガを喜ぶわけではないですが、ホッとしたことは確かです。でもいいピッチャーがたくさんいますからね。大谷が抜けても菅野とか、ものすごい良いピッチャーいます。

――期待・注目する選手っていますか?
大使 よく日本の方々も知っているデスパイネとかセペダとか。あとは外野手ですけれども、ヨエルピ・セスペデスというのも、若手ですけれどもすごいです。チームとして上手くバランスがとれていて、スピード野球ができるチームです。走りますよ。



――最後に一言メッセージを
大使 素晴らしい野球を堪能することができるでしょう。どっちが勝つかというのは、球場で決まることですけれども、良い試合を楽しんでもらえることは確かです!



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