“ラッキーボーイ”のバットが光る
この男の活躍を誰が予想しただろうか。それも、バットで。
15日のキューバ戦。1点を追う6回、一死一二塁で小林誠司が打席に立った。「代打もなかったので、初球から積極的にいこう」と、キューバの3番手・ラエラの初球を迷いなく振りぬいた。打球は三遊間を抜け、レフト前へ。二走の松田が生還し、同点に追いついた。
「好調だとは思っていない。打てているという感じもない」と小林。しかし、この日は5回にもレフト前ヒットを放つなど3打数2安打。WBCの5試合で14打数7安打の打率5割と良い意味で期待を裏切る活躍を見せている。
「打席に立たせてもらっている以上、しっかり食らいついていこうという気持ちで立っている。それが良い結果につながっているのかな」と頭を掻く。
指揮官も認める“ラッキーボーイ”。しかし「自分ではそんな風に思っていない。自分の仕事はランナー進めるとかバントなので、そこをしっかりやっていく」と凛とした表情で話す。9日の任意練習では、参加した選手がフリー打撃で調整を続ける中、マシン相手に黙々とバント練習をこなした。
あくなき向上心が小林を成長させる
日々反省、日々成長。この日は打撃で存在感を示した小林だが、「打つ方ではあれなんですけど、守る方でもうちょっと考えてやらないといけないかな」と、守備に関しては猛省する。
普段から巨人でバッテリーを組んでいる侍のエース菅野が乱れ、4回7安打4失点。「キューバが積極的に打ちにきてたので、押したり引いたりが難しかった。インサイドにいったところでヒットされたり、変化球も長打にされたりしたので、押すところはもっと押して、引くところはもっと引いたら良かったという部分も結構あった」と振り返る。
4回、6番・サーベドラ、7番アラルコンに連打を許し、迎えた大ピンチ。「大丈夫」。両手で握りこぶしを作り、マウンドにただ一人で立つ相棒に無言のエールを送った。「いつも(菅野)智之には助けてもらっているので」と。
投手がベストパフォーマンスを発揮できないのは捕手の責任。そう腹をくくる。菅野の投球は「調子は良くはなかったが、悪くもなかった」。だからこそ「もっと防げた」と唇をかみしめた。
壮絶なシーソーゲーム。「勝ち越した場面で何とか抑えたいと思ったが、流れを止められなかった」。「もっと考えてやっていかなければいけない」と自分を責めた。
あくなき向上心。それが扇の要を日々大きくする。