「迷いますね…」。指揮官から嬉しい悲鳴が聞こえてきた。開幕まで1週間を切り、オープン戦も全日程が終了。いよいよ31日の開幕へ向けて選手の見極めなど、首脳陣たちも着々と準備を進めている。
そんな中、悩ましい日々を過ごしているのが西武の辻発彦監督。若手・中堅選手のアピールにより、開幕スタメンを決めかねているというのだ。
◆ 石毛以来36年ぶりの新人遊撃手スタメンへ
早々に開幕スタメンの“内定”をもらったのがルーキーの源田壮亮だ。トヨタ自動車からドラフト3位で入団。社会人No.1野手の評価を受け、即戦力としての活躍を期待されている。
オープン戦では持ち味の堅守だけでなく、打撃でもアピール。オープン戦ラスト3戦は全試合で安打を記録し、打率を3割に乗せた。
辻監督は「他にいない」と源田の開幕スタメンを明言。源田も「意識しすぎると考えてしまうので良くない。できることしかできないので、できることを精一杯やりたい」と意気込んだ。
ただ、期待するが故に注文も多い。源田のオープン戦中の失策は「1」。しかし、指揮官は「記録には残っていないが、他にもあった」と1指摘。「エラーはつきものだが、気の入っていないプレーはダメ。投手にも失礼」と述べる。
源田自身も武器である守備への評価は厳しく、「オープン戦だから大事にはなってないけど、記録に残っていないところで細かいミスがあった。シーズンではそういうことがないように」と気を引き締める。
長らく固定できていなかった西武の正遊撃手。24歳のルーキーはその座をつかみ獲ることができるか。
◆ 外崎、永江も負けじと猛アピール
しかし、他の遊撃手候補生たちも負けてはいない。ルーキーの活躍に闘志を燃やしている。
源田と同学年の外崎修汰もアピールを続ける。オープン戦では7試合に出場し、3安打3打点の打率.333という成績を残した。
同学年ルーキーの活躍に「焦りはあった」。「源田の打席で自分だったらとイメージしながら見ています」と、虎視眈々とその座を狙っていた。
オープン戦では代打での出場が多かったが、「スタメンと違って代打はその打席しかない。そこでできなかったら後悔する。ボール球でも打ちにいくくらいの気持ち」と話す。指揮官もその積極性を評価する。
26日の楽天戦では「2番・レフト」でスタメン出場。“人生初”の外野手に挑戦した。約1週間ほど前に監督から「外野も守れるか?」と問われた外崎。「ハイ!」と即答したという。
アマチュア時代も含め、試合で外野を守った経験はゼロ。この日も、佐藤友亮外野守備走塁コーチから借りたグラブで守備についた。試合後「緊張しました。内野とは距離感も違うし。カバーの位置とかも分からなくて」と苦笑いも「チャンスをもらえるなら」と前のめりだ。
辻監督は「(外野は)オプションとして。野手が限られた中で外野もできれば駒として使える。足もあるし」とチーム屈指の俊足を誇る若獅子に期待を寄せた。
「永江も良い」。指揮官はにっこり笑う。
今季から浅村栄斗が昨季までつけていた背番号「32」を引き継いだ堅守が自慢の若獅子。18日に行われたソフトバンクとのオープン戦では「9番・遊撃」で出場し、2打数1安打4打点と課題とされていた打撃でもアピールした。「粘り強い打撃ができるようになってきている」と辻監督は評価する。
遊撃の開幕スタメンは源田に内定したが、ルーキーということも考慮し「1シーズンずっと出られるわけじゃない」と指揮官。互いに切磋琢磨試合ながら、成長してくれることを望んでいる。
◆ 外野手争いも熾烈
遊撃手だけじゃない、外野手争いも熾烈だ。木村文紀、田代将太郎らの中堅層がオープン戦で猛アピール。辻監督も「成長を感じる」とうなづく。
田代は「調子はまぁまぁじゃないですか」と謙遜するが、13試合で10安打6打点1本塁打、打率.270。一時は「消極的になっていた」と振り返るが、指揮官から「積極的にいけ」とアドバイスされ、迷いがなくなった。20日の楽天戦、26日のDeNA戦では代打に送られた打席で安打を放つなど、起用に応える働きで指揮官の信頼を得た。
一方の木村文も13試合に出場し、13安打5打点2本塁打、打率.283。25日のDeNA戦ではマルチ安打、26日には同点ソロ本塁打を放つなど存在感を示した。
◆ これが一番の悩み?「2番」問題
さらに、監督を悩ますもう一つの問題がある。それは「2番」の起用だ。
源田、田代、外崎、渡辺直人、斉藤彰吾、熊代聖人…。オープン戦では様々な「2番」を試してきたが、「難しいですね」と頭を抱える。
指揮官が望む理想の「2番」は「いろんなことができる打者」。「1番」にはシーズン歴代最多安打記録(216本)保持者の秋山翔吾、主軸には浅村、中村剛也、メヒアなどが並ぶレオ打線。「これだけの選手がいる。(2番は)小技やエンドラン、盗塁など色んなことができる打者。しつこい打者がいい」と語る。
「田代も外崎も、源田も良い…」。それも、好調な選手が多いが故の“嬉しい悲鳴”。「開幕まで考えます」。指揮官の思案の日々はもう少し続きそうだ。