年俸1000万円の助っ人が首位打者
2月25日に開幕したオープン戦も、26日の日曜日をもって全日程を終了した。
終わってみれば13勝2敗3分という圧倒的な成績でロッテが首位を独走。最下位は19試合で5勝しかあげることができなかった巨人という結果になった。巨人を筆頭にセ・リーグの4チームが下位を占め、勝率5割を超えたのは阪神(全体4位)のみと、成績だけ見るとパ・リーグ勢の仕上がりの良さが際立つ結果となっている。
そんな中、打率.375で今年のオープン戦の“首位打者”に輝いたのが、DeNAの新助っ人アウディ・シリアコである。
今年の新助っ人と言えば、オープン戦で本塁打と打点の二冠に輝き、チームの快進撃を支えたロッテのマット・ダフィーに注目が集まっているが、シリアコは苦しむチームの中で猛アピールを見せた。
本塁打や打点ではあまり数字を伸ばせなかったものの、21安打は全体の2位タイ。長打率も5割を超えており、首脳陣の期待を超える活躍を見せたと言っていいだろう。なにせこの男、年俸1000万円(推定)で獲得した“格安助っ人”なのだ。
チームの救世主に?
ドミニカ共和国出身、今年の6月で30歳を迎える右打ちの内野手。2005年にデトロイト・タイガース傘下のマイナーチームに入団すると、2015年まで3Aのチームを渡り歩き、通算317試合で打率.228、34本塁打、147打点という成績を残した。
昨年は戦いの舞台を日本のBCリーグへと移し、石川ミリオンスターズでプレー。68試合で打率.332、15本塁打と活躍を見せると、シーズン終了後にはトライアウトを経てNPB入りのチャンスを掴んだ。
年俸1000万円(推定)と、助っ人としては破格な契約ではあるが、「チームのサポートに徹して自分の力を発揮したい」とNPBという新たなステージでのチャレンジに闘志を燃やす。
DeNAの内野事情といえば、ロペスの一塁と倉本寿彦の遊撃は固まっているものの、二塁は昨年も石川雄洋が87試合、エリアンと宮崎敏郎が42試合ずつと固定できず。三塁も白崎浩之が78試合、エリアンが39試合で山下幸輝が35試合と、二塁・三塁はレギュラーを固定して戦うことができなかった。
今オープン戦では三塁手として12試合に出場したシリアコ。失策2つで守備率.931とやや不安な面もあるが、オープン戦とはいえ首位打者を獲得するほどの打棒ならばラインナップに並べたいところだろう。もしこのまま三塁手として上手くハマれば、まさにチームの救世主となる。
もうひとりの下剋上
ただし、その道のりは平坦なものではない。
現状。エリアンと山下の2人は故障で出遅れているものの、目下のライバルとなる白崎は好調。規定打席には乗らなかったものの、17試合の出場で打率.348をマーク。本塁打は全体トップタイの4本を記録しており、レギュラー確保へ順調な仕上がりを見せている。
白崎には昨年の三塁最多出場という実績もあるだけに、この競争に勝つのは容易ではない。
また、シリアコには“枠”という問題も付きまとう。
DeNAは今年ウィーランド、クライン、パットンという3人の投手を新たに獲得し、野手には2年目のロペスとエリアンがいる。同時に一軍登録できる外国人選手の枠は「4」という決まりがあるため、常に入れ替えの危機があるのだ。
生き残るためには、とにかく結果を残すしかない。クラインとウィーランドがオープン戦で結果を残せず、エリアンも出遅れている現状から、開幕直後こそチャンス。ここで「二軍に落とせない」と首脳陣に思わせるような活躍、結果が必要だ。
チームでは昨年のドラフト最下位・9位入団の佐野恵太が開幕一軍を掴むという“下剋上”が大きな話題となったが、最低年俸助っ人の“下剋上”にも注目だ。