◆ 世界レベルを証明した筒香
野球世界一を決する戦い、第4回ワールド・ベースボール・クラシックが閉幕。世界一奪還を目指して戦った侍ジャパンのど真ん中にいたのは、まだ25歳の筒香嘉智だった。
球界の実力者の中に入っても、その存在感はかすむことがなかった。日本の全7試で4番に座り、8安打で3本塁打、8打点。打率は.320と文句なしの数字を残している。
準決勝のアメリカ戦こそ4打数無安打に終わるも、その風格はメジャーリーガーがずらりと並ぶ相手と比較しても全く引けを取らない。8回、二死一・二塁のチャンスで回ってきた打席。角度良く上がった打球は伸びを欠いて右翼手のグラブに収まったが、打った瞬間に思わず立ち上がってしまった、もしくは声をあげてしまったという野球ファンの方も多かったのではないか。
◆ 秘めたる想いを胸に
日本のために戦い抜いた筒香。しかし、実はそれだけではない。日本の勝利のために全力を尽くすなか、“野球人気の回復”という想いも込めて世界との戦いに臨んでいた。
「子どもたちに夢を与えたい。野球人口が減ってきている。自分たちのプレーする姿を見て、野球をやってみたいと思ってもらえるように全力で勝ちに行く」。
そんな筒香の願いは、いつしか侍ジャパンの総意になっていた。
東京ドームで放った3本塁打はいずれも印象深い。その放物線に日本中が熱狂した。
筒香が打席に入ると、他の選手とは違うざわめきが起こる。スタンドのファンが両手を掲げ、いつものテーマの前奏がスタート。球場中がひとつになり、背番号25の一撃を祈る。誰もが認める“日本の4番”を証明した瞬間だった。
◆ “日本の4番”として迎える新シーズン
残念ながら、世界一には手が届かなかった侍ジャパン。大会前に意気込みを問うと、筒香は「いい勝負をしたい」と言った。
「相手も勝ちたいし、自分たちも勝ちたい。そういう状況でいい勝負を見せられればいい」。相手を尊重した言葉だったが、そこには“日本の4番”として背負う責任感、重圧が垣間見えた。
敗戦後には「多くのファンの声援、ありがとうございました。負けてしまったけどいい勝負はできた。打てなかったのは自分の技術不足。でも大会を通して成長できたと実感しています」と悔しさをにじませつつも手応えを口にし、最後は「WBCはすごく影響力がある大会。少しでも子どもたちが野球に興味を持ってくれたらと思います」と締めた。
筒香の進化は、まだまだこれから。名実ともに“日本の4番”として迎える2017年シーズン、ハマの主砲はどれだけの活躍を見せてくれるのか。今からたのしみだ。