◆ アメリカ相手に貫いた“強気”
4月4日の横浜スタジアム。開幕3連勝で敵地に乗り込んだ巨人のバッテリーは菅野智之と小林誠司だった。つい先日まで行われていたWBCでは、日本の“黄金バッテリー”として活躍。世界に爪痕を残した2人である。
日本中が祈るような思いで見つめた準決勝のアメリカ戦。完全アウェーのドジャースタジアムで、屈強なメジャーリーガーを相手に18.44メートルの攻防。霧雨が降りしきるコンディションの中、日本のバッテリーは強気の勝負を貫いた。
「今まで味わったことのない雰囲気だった。なんとなく試合に入らないようにはした」と振り返った菅野。失敗が許されない一発勝負を前にしたことは、バッテリー間の“すれ違い”を解消することだった。
その前の登板にあたるキューバ戦を振り返り、「あのときはうまく意思の疎通が出来ていないと思った。誠司がどう思っているかは分からないけど」と反省点を挙げる。その点、「今回(アメリカ戦)ではしっかり話をしましたし、自分も投げたいボールを投げたかった。うまく高めのストレートを使おうという話しをしました」という。
こうした確認作業の末に出た答えが、“強気の攻め”だったのだ。
◆ 成長した“黄金バッテリー”
結果は6回1失点(自責0)。試合には敗れたが、菅野は「こういう大一番で自分の力をしっかり出せたのは自信になっていくと思う」と前を向いた。
そして、そんな極限の勝負を経験した2人は、間違いなくひと回りもふた回りも大きくなって帰ってきた。
巨人のエースが「野球人生で最高の経験」と語ったほどの修羅場。あれだけの舞台で力勝負ができたのだから、もう2人に怖いものなどない。
迎えた菅野にとってのシーズン開幕戦。ロペスの二塁打で1点こそ失ったものの、7回を1失点の力投。6安打を浴びながらも相手の主砲・筒香嘉智は完ぺきに封じ込め、要所を抑える投球で試合を作った。
エースの力投に打線もギリギリで目覚め、菅野の代打として出場した脇谷亮太の安打を皮切りに一気の4得点で勝ち越し。幸先よく白星発進を切り、チームも開幕4連勝。これ以上ない滑り出しとなった。
オープン戦では苦しい戦いを強いられた巨人だったが、チームに頼れる2人が帰ってきた。世界との戦いを経験した日本の“黄金バッテリー”が、巨人をV奪還へと導く。