◆ たしかな成長
WBCの熱も落ち着き、いつものシーズンの戦いが進んでいるプロ野球。日本を沸かせた“ラッキーボーイ”は、定位置である東京ドームのホームベースの後ろに戻ってきた。
巨人・小林誠司。大会期間中に残した打率.450は侍ジャパンの中でもトップの数字だったが、セ・リーグでは規定到達者のなかでワーストの.103。魔法が解けたようにバットの勢いは失われてしまっているが、成長を感じるという声は少なくない。
「自身を持ってやっている」と評したのはDeNAのアレックス・ラミレス監督。敵将から見ても、WBCという大舞台を経て帰ってきた男の存在感は際立っているという。
大きく変わったのはリード面。一朝一夕で成長を体現できるものではないが、意識の変化はすぐに現れる。昨年まで「外角・変化球」中心の配球だったのが、今年は「内角・直球」を有効に使えるようになった。臆することのない強気のリードがストライク先行の投球を呼び込み、投手のリズム、そしてチーム全体のリズムを良くしている。
開幕3カード目までの成績を見ても、昨季が9試合で防御率3.07(失点30/自責29)だったのが、今季は8試合で防御率2.57(失点22/自責20)まで改良。今季はその8試合のうち、先発投手がクオリティ・スタート(=QS/6回以上・自責点3以内)を達成できなかったのは1試合だけだった。
また、リード以外の面でもプラスをもたらしていることがある。それが阿部慎之助の復活だ。
昨季はどうなるか分からない起用法の中でもがき苦しんだ主砲だったが、今年は正捕手として小林が君臨。これで本当の意味で“一塁専念”となった男は、ここまでリーグ二冠の5本塁打・15打点という大暴れを見せている。
小林の成長が阿部の打撃復活に繋がった…とは言い切れないかもしれないが、ひとつ不安のタネが解消されたのは間違いない。これも2017年の巨人にとって大きなポイントとなっている。
◆ 絶対に倒さなければならない相手
しかし、開幕4カード目に入って試練が訪れる。昨季王者・広島をホームに迎えての3連戦。初戦をエース・菅野智之で落とすと、2戦目も内海哲也が3回KOという乱調で2連敗。2試合連続の9失点と打ち込まれた。
守備の乱れにも苦しんだとは言え、ここまで順調だった投手陣が相手強力打線に飲み込まれての連敗に責任を感じるところも大きいだろう。V奪還を目指す以上、広島は絶対に負けられない相手になる。これから続く長い戦いに向けて、やられっぱなしでは終われない。
「捕手が評価されるには、とにかく勝つこと」と語ったのはかつてのWBC日本代表捕手・里崎智也氏。「本当に成長したかどうかは、今年一年の結果で示すしかない」という言葉通り、今季が小林にとって本当に重要な一年となる。
掴んだ自信と、新たな課題――。小林誠司の4年目のシーズンから目が離せない。