下克上で話題に
今年の開幕一軍ルーキーの中で、一際大きな話題を集めた“下克上男”がいた。
DeNAの大卒内野手・佐野恵太。広陵高校から明治大学というエリートコースを歩んだ男であるが、ドラフトで名前を呼ばれたのは84番目のこと。最後から4番目、セ・リーグでは最下位という指名だった。
11月の新入団会見で、色紙に書いた言葉は“忍耐”。「どんな壁が立ちはだかっても、乗り越えていけるよう頑張っていきたいです」と力強く語った男は、すぐに指揮官の目に留まる。
育成を除く新人9選手のうち、6名をキャンプ一軍に抜擢したアレックス・ラミレス監督の期待に応え、実戦練習で持ち前の打力を猛アピール。計9試合の実戦で3割近い打率と2本の本塁打を放ち、指揮官に「ルーキーのMVP」とまで言わしめた。
その後のオープン戦では、筒香嘉智がWBCに参戦していたことや、梶谷隆幸が故障で離脱したこともあり、本職ではない外野のポジションに入ることも。その中でもしっかりとバットで結果を残し、17試合で打率.319、2本塁打、11打点をマーク。最終戦の西武戦で本塁打を放ち、ラミレス監督のハートも撃ち抜いた。
もう一度這い上がれ!
ドラフトの順位など、入ってしまえば関係ない。佐野は開幕一軍を目標に取り組み、目標に向かって突き進んで来た。
しかし、開幕後はプロの壁に苦しむ場面も。3月31日に代打で迎えたプロ初打席は、サードへのファウルフライ。初安打は4月8日のプロ7打席目までおあずけとなっていた。
14試合の出場のうち、スタメン出場はわずかに2試合。極端に減った出番の中で持ち味を発揮することはできず、打率.133、本塁打は0のまま24日に初めての登録抹消となった。
下克上ストーリーは一旦小休止。だからといって、これで終わりではない。シーズンはこれからも続いていく。
「どんな壁が立ちはだかっても、乗り越えていけるように...」。自分でも口にしていたように、本番はここから。もう一度這い上がるための戦いがはじまる。
次に横浜スタジアムに背番号「44」が戻ってきた時は、きっと以前よりも頼もしくなった姿を我々に見せてくれることだろう。佐野恵太の復活劇に注目だ。