2打席のチャンスも...

　5月17日、ZOZOマリンスタジアムで行われた西武－ロッテの一戦。西武が着実に得点を重ねてリードを広げていった試合終盤、ファンの注目はある男の打席に集中していた。

　その男とは、「9番・捕手」でスタメン出場した岡田雅利。プロ4年目の27歳で、守備がウリの控え捕手。そんな役割が主だった男は、この試合で大きなチャンスを迎える。

　3回の第1打席、先頭打者として打席に入った岡田はスタンリッジの速球をレフトへと弾き返す。ライナーが地面に着くか、着かないかというところで、ロッテの左翼手・パラデスがまさかのダイビング。打球が後ろへと抜けていく間に、岡田は三塁まで到達した。

　プロ入り後はじめての三塁打が飛び出すと、第2打席は内野安打、第3打席で二塁打をマーク。3打席でサイクル安打にリーチをかける。

　本塁打は2015年に放った1本だけという岡田だが、辻発彦監督は「こういうチャンスはなかなかない」とサイクル狙いを許可。「追い込まれるまではいいよ」と打席に送り込んだ。

　「開くな」というアドバイスのもと打席に立った岡田は、普段は絶対に見せないようなフルスイングを見せるも、第4打席は空振り三振。8回に回ってきた第5打席も空振り三振に倒れ、大記録達成はならなかった。

昨季は2人が達成

　実はこの日、広島でもサイクルリーチをかけていた男がいた。

　広島の1番・田中広輔は第1打席こそ中飛に倒れるも、第2打席から遊安、右三、右本でリーチ。こちらは二塁打が出ればサイクル達成という状況で9回に第5打席を迎えたが、ニゴロに終わった。


　やはり難しい『サイクル安打』。改めて説明すると、ひとりの選手が単打、二塁打、三塁打、本塁打を1試合のうちに達成すること。そもそも1試合4安打もなかなかお目にかかれるものではないなかで、三塁打や本塁打を含めて達成というのはかなりハードルが高い。

　これまでのプロ野球では64人・69回達成されている『サイクル安打』。昨年は7月20日に中日の大島洋平が、7月30日には阪神の福留孝介が達成し、実に12年ぶりとなる同一シーズンの複数人による達成となった。

　ちなみに、メジャーリーグでは昨季3人が達成。今季も4月だけでウィル・マイヤーズ（パドレス）、トレイ・ターナー（ナショナルズ）、カルロス・ゴメス（レンジャーズ）の3人が達成している。

NPBとMLBで達成した唯一の男

　そんな難しいサイクル安打を、日本のプロ野球とアメリカ・メジャーリーグの両方で達成した男がいる。

　イチローは三塁打も多く、本塁打も打てるイメージであるが、実は日本でもアメリカでもサイクル安打を達成したことがない。松井稼頭央は西武時代の2000年6月7日に行われた近鉄戦で1度達成しているが、メジャーではなかった。


　正解は、アレックス・オチョア。日本では中日や広島で合計6年間プレーした外野手である。

　中日時代の2004年、4月13日に行われた巨人戦で第1打席にライトへの本塁打を放つと、つづく第2打席で三塁打、第3打席では二塁打をマーク。安打を残し、その後の2打席は四球で歩かされたものの、延長戦でついに待望の1本が飛び出し、サイクル安打を達成した。

　自身にとってはメジャーデビュー2年目の1996年7月にフィリーズ戦で達成して以来、自身2度目のサイクル安打。これにより、日本とアメリカの両球界でサイクル安打を達成した史上初の選手となった。

　ちなみに、本塁打→三塁打→二塁打→単打の順にクリアしていく『リバースサイクルヒット（逆ナチュラルサイクル安打）』もNPB史上初のこと。まさに記録づくめの1日となった。

　史上70回目の達成者は一体誰になるのか…。次なる挑戦者の登場を楽しみに待ちたい。