◆ プロ入り16年で初のサヨナラ本塁打
西武一筋16年、ミスターレオが勝負を決めた。
21日のソフトバンク戦、守護神・増田達至がソフトバンク・松田宣浩に一発を浴び、6-6の同点で迎えた9回裏、一死走者なしで打席に立ったのは栗山巧だった。ソフトバンクの6番手・岩嵜翔の3球目、149キロの直球をとらえ、右中間スタンドへ運んだ。
プロ16年目にして初めてのサヨナラ本塁打。右手を高々と上げて人差し指を天に突きさしながらダイヤモンドを一周し、チームメイトが待つホームへ飛び込んだ。
「水かけたのは誰なんだろう。後で(動画を)みます」。照れ隠しにおどけながらも「本当に嬉しくて。ファンの皆さんの歓声が耳に入って嬉しかったです」と話す表情はまるで少年の様だった。
◆ ケガで出場機会減、続いた苦悩の日々
「もっともっと試合に出たい」。4月7日、プロ野球史上187人目となる通算1500試合出場を達成した栗山はこう話した。しかし、神様は意地悪だった。翌4月8日、一塁上でソフトバンク・内川と交錯。その後から右ふくらはぎの状況は芳しくなく、15日に軽度の炎症と診断された。
その後は苦悩の日々だった。スタメンでの出場機会は減り、指名打者や代打での出場が続いた。打撃の調子も上がらず、打率は2割台前半。「何で打てるところに投げてくれへんのやろ」と思ったこともあったと振り返った。
先週、チームは6連勝を飾るなど、好調だった。しかし、栗山自身その輪に入ることができなかった。「誰かが打って、ピッチャーが抑えて。みんなが勝つことに集中している中、(自分だけが)出遅れていた」。遠くを見つめる。「結果がでないこともあるし、それが野球。前向きにとらえていかないと」と気持ちではわかっていたが「追い込まれていた」と心境を吐露した。
◆ 指揮官から「頼むよ」の一言
「頼むよ」。21日の朝、辻発彦監督はそういって栗山の肩を叩いた。「きのう(20日)のフリーバッティングを見ていて状態は良いと思っていた。きょう(21日)も練習から(右中間スタンドに)入れていたので」と3試合ぶりの先発起用を決めた。
ベテランはその起用に応えた。3回の第二打席、無死一、二塁の場面で犠打を成功させた。そして最後にドラマを生んだ。
「いけー!!!」ベンチではみんなが叫んだ。「よく打ってくれた」と指揮官は笑顔で称えた。球団もすぐさま「栗山巧サヨナラ本塁打記念Tシャツ」の発売を決めるなど、所沢全体を栗山フィーバーに包んだ。
「ほっとしました」。滴る汗をタオルで拭いながら安堵の表情で飛び出した本音。しかし、それはすぐに喜びへと変わった。「真っ直ぐしか打てそうになかったから、引っかかってくれればと。バーンってふったらバーンっていきました」と興奮冷めやらぬ様子で話すミスターレオの目はキラキラと輝いていた。
2011年から6年連続負け越し中のソフトバンクに2連勝し、ゲーム差も「2」に詰め寄った。「ソフトバンクにはずっと負け越している。勝ちたい気持ちが強かった」。頼れる背番号「1」は、男らしく、かっこよかった。