代打で今季初出場
「代打・金子侑司」
そのアナウンスとともに、割れんばかりの声援と拍手がメットライフドームを包んだ。
30日、西武-広島戦の9回、左すねの疲労骨折から復帰した金子侑が代打で今季初出場。結果は中飛に終わったが、「だいぶ緊張しましたけど、雰囲気を感じることができてよかった。(歓声は)ありがたかったですね」と笑顔をのぞかせた。
悔しさで悶々とした日々
2カ月の二軍生活。「悶々とした日々を過ごしていました」と金子侑は振り返る。
オープン戦の終盤、足の痛みを訴えて3月18日のソフトバンク戦から欠場。3月22日のヤクルト戦からは一軍に帯同しなくなった。
痛みは3月に入った頃からあったという。騙し騙しプレーし続けてきたが、間もなく開幕という時、ついに限界がきた。
左すねの疲労骨折。開幕一軍は絶望…。2年連続で開幕戦のグラウンドに立てなくなったことが「悔しかった」と明かす。「走れないのは本当に辛かった。もう少し早く治ると思っていたんですが、思ったよりも長引いてしまって...」。唇をかみしめながら目線を上げた。
それでも落ち込むことはなかった。「自己管理が足りなかったことが原因なので。ここから挽回しようと」と前を向く。メットライフドームに隣接する西武第二球場にいくと、そこにはいつも「だいぶ良くなってきてます。すぐ(一軍に)上がりますから。待っててください」と明るく振る舞う金子侑がいた。
ファームでは19日の楽天戦から実戦復帰。8試合で打率.478、7盗塁をマークするなど、「ずっと走れていなかったので、自分の中の感覚を戻すためにも。走れますというところを見せたかった」と首脳陣にアピールを続けた。5月にも関わらず、真夏のように降り注ぐ灼熱の太陽の下、「一軍でプレーしている姿を想像しながら」走り回った、白い肌をこんがりと小麦色にしながら。
チームの起爆剤に
チームではルーキーの源田壮亮がリーグトップの「13」盗塁をマーク。ここに金子侑の足が加われば、さらに攻撃の幅は広がる。悲願のリーグ制覇へ、いまいち上がり切れないチームの起爆剤として金子侑には大きな期待がかかる。
大きな歓声からもわかるように、ファンも待ちわびていた。試合後、「金子ー、おかえりー」「今から盗塁王狙っちゃえよ」という声援に手を挙げて応え、笑顔でロッカールームへと引き上げた。
「盗塁王は源田くんに譲ります」とおどける27歳。「ここから自分の野球人生の中で、盗塁を増やしていければ」と気合いを入れた。
2カ月遅れで幕を明けた金子侑のシーズン。「交流戦の開幕に上がれたことは良かった。ここからがスタート。良い流れに乗れるように」。背番号「2」はようやくその一歩を踏み出した。