◆ 開幕から安定した投球
今季序盤のプロ野球界を盛り上げた主役は間違いなく楽天だった。
茂木栄五郎とペゲーロの超攻撃型1・2番コンビや、エース・則本昂大の連続2桁奪三振記録更新などが話題となるなか、開幕から2か月以上にわたって、チームを支えてきた中心選手の一人が守護神の松井裕樹である。
松井にとって今季がプロ4年目。クローザーとしては3年目を迎えた21歳の若き左腕だ。入団2年目の2015年に当時の大久保博元監督にクローザーとして起用されると、その才能が開花。33セーブ、防御率0.87という驚異的な成績を残した。
昨季は、防御率こそ3.32と悪化したが、30セーブをマークし、何とか面目を保った。そして迎えた2017年。侍ジャパンにも選出され、3月にはワールド・ベースボール・クラシック(WBC)も経験。WBCに向け、例年とは違う調整法を強いられ、登板機会も少ないままのシーズンインとなった。
しかし、松井はいとも簡単にその不安をかき消すことに成功する。ここまで26試合に登板し、2勝1敗19セーブ、27イニングを投げ1失点(自責点1)とほぼ完ぺきな投球を続けている。
◆ シーズン最多セーブ記録の可能性
チームの快進撃も手伝い、4月には3連投1度を含む4度の連投があり、登板過多の不安がささやかれた。しかし5月は連投が1度だけ、6月もここまで登板自体が2試合だけである。2位ソフトバンクの足音が聞こえる中、大事なシーズン中盤~終盤に向けて臨戦態勢は整いつつある。そこでチームの優勝とともに松井に狙ってほしいのが、シーズン最多セーブ記録である。
これまでの記録は岩瀬仁紀(2005年)と藤川球児(2007年)がマークした46セーブ。松井が現在のペースでセーブを積み重ねていけば、51セーブに到達する。今季ここまでが出来過ぎだっただけに、このペースを維持するのは至難の業だろうが、プロ野球記録更新の可能性は十分あるだろう。
◆ 通算セーブ記録更新も期待
また若くしてクローザーに定着した松井には、歴代の通算最多セーブ記録も狙ってもらいたい。この大記録は今も現役の岩瀬が保持する(402セーブ)。2位が元ヤクルトの高津臣吾氏(286セーブ)、3位は大魔神こと佐々木主浩氏(252セーブ)である。
仮に松井が今季を含めて年間30セーブを続けていけば、25歳で200セーブに到達。27歳で佐々木氏の記録を塗り替えることになる。さらに28歳で300セーブ、32歳で400セーブの大台にのせることができる。もし38歳までこれを続けることができれば、600を超える恐るべき数字となる。
当然、今後の活躍次第でメジャー挑戦もあり得るだろう。また、長期のスランプや故障のリスクもある。それでも現役投手の中で、プロ野球史上最強のクローザーになる可能性を最も感じさせてくれるのが松井である。
まずは今季、自身の入団後初めて経験する優勝争いのプレッシャーの中でしっかり結果を残し、“大記録”への階段を上り始める姿を見届けたい。
文=八木遊(やぎ・ゆう)