ニュース 2017.06.13. 05:00

【松本秀夫】ショウアップナイターリスナーに愛され続けた男が、ニッポン放送を辞めてフリーになった本当の理由

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『松本秀夫』。プロ野球ファンならずとも、一度はその名前を耳にした事があるかもしれない。
「ニッポン放送ショウアップナイター」はもとより、
シーズンオフには情報バラエティ番組などのパーソナリティもこなし、
抜群のバランス感覚を持つ、プロ野球実況30年のベテランアナウンサー。

松本アナはこの春、ニッポン放送を退社しフリーアナウンサーの道に。
番組では一言二言、その理由などが語られた事があったが、
今回「なぜフリーの道を選んだのか?」その問いに対して、真意を赤裸々に語ってくれた。



―――スポーツアナウンサーを志したのはいつからでしょうか?

子供の頃野球が好きで自分でも野球をやったがどうにも下手だった。中学時代は巨人ファンでよく多摩川グラウンドにも行っていたくらい。
そんなときに関根&深沢コンビのショウアップナイターをよく聴いていて、なんて楽しい中継だろうと憧れていました。
同じ時期に、同級生の親友のお母さんが、いつも私の電話を取り継ぐときに「あなたは声の美男子だから(笑)、アナウンサーになりなさい」と何回も刷り込まれたのも大きかった。


―――実況で気を付けていることはありますか?

実況を上手く喋るための三要素を整える。1:喉の調子、2:口の回転、3:頭の回転。1は前日の酒を控える、2は放送前に早口言葉をするなど調整法があるんだけど、3についてはどうすればいいのかいまだに答えが見つからない。よく寝てもダメな時はあるし、体調が悪くても頭は冴えているってこともある。こればかりは蓋を開けて見ないとわかりません。


―――今まで中継中にいちばん困ったことはどんなことでしょうか?また、中継中にやってしまった失敗は?

困ってしまったことは、 2011年の郡山の実況で、しゃべっているうちにどんどん声が枯れていき、最後はカスカスになった。消えてしまいたかったという事。
中継中での失敗は、トイレに行ったら数秒間に合わず、解説の石井一久さんが「えーー、松本さんがトイレに行っています」と、一言繋いでいるのを見た瞬間ですかね・・・


―――私生活では様々なことがあったかと思います(http://www.1242.com/lf/articles/11091/
実際にニッポン放送を辞めて、フリーになろうと思ったのはいつ頃からでしょうか?また、キッカケは何でしょうか?


うーーん、死んだ母の介護をしていた2012年から13年頃、精神的にしんどくて家庭も上手くいかなくなった。
13年3月に母が死んで背負っていたものをおろしたような形でひとりになった。
ここから先の人生、仕事でやりたいことをやりたいなと思い始めたのはその頃だと思います。そして55歳になった。私が入社した頃の定年です。
バリバリ働けるのはあと5~10年。ニッポン放送でも充分楽しく仕事をしてきたけれど、先が見えてきた。着陸予定の滑走路が見えちゃったっていう感じでしょうか。
もう少しだけ自由なフライトを楽しむならこのタイミングかなと。幸か不幸か背負っているものもないので、お金のことをそんなにシビアに考える必要もないですから。
もっとも終わってみたらJFKに着陸予定がラガーディア空港に着いていたって程度のことかもしれません(笑)


―――それは誰かに相談を?師匠・深澤弘アナウンサーは何と?

もちろん師匠の深澤さんには相談しました。制作部時代の師匠~湯浅明さん(元ニッポン放送アナウンサー)にも。


―――2017年3月31日(金)今年のプロ野球が開幕。奇しくも松本アナはこの日が社員生活最後の日であり、最後の社員としての実況でした。朝、目が覚めた時、何を思いましたか?

こんな偶然ってあるんですね。さすがに気持ちが高まって前夜は寝つきが悪かった。朝は清々しかったです。


※2017年3月31日。社員生活最後の日の松本アナ

スーツを着込んで社長から辞令をもらって、さぁ開幕実況、気合を入れるぞと思っていたら旅行代理店から電話があり、「2月の沖縄キャンプの時の航空券代が未払いです」って。経理に相談したら顛末書を書けと言われました。「今後2度とこのようなことのないように…」って打ち込んで、もう2度とはないじゃんって自分にツッコミを入れてました。


―――そしてフリーになりました。何か変化はありましたか?

実況が失敗できないって気持ちはより強くなりました。来年契約してもらえるかわからないし、辞めて実況が下手になったとは絶対に言われたくないので。
あと、ギャラの請求書を出すという行為が新鮮です。いままでもらってばかりだったから。


―――今後やりたいことを教えて下さい。

話があれば何でもやります。放送に限らずあらゆることに首を突っ込みたい。強いて言えば芝居は大好きなのでかかわりたい。演者というより作り手ですね。


―――いまでは名コンビ。初めて江本さんと組んだ時の感想を教えて下さい。

最初の頃はよくアクビをされました(笑)


―――後輩アナウンサーに、これだけは伝えておきたい!


※ZOZOマリンスタジアムにて取材。

自分が楽しんでいなければ聴き手は絶対に楽しめない。ただし自分が気持ちよくなってしまってはこれまた聴き手は楽しめない。


―――ショウアップナイターと共に30年実況を続けてきた松本アナから、改めてショウアップナイターの魅力を教えて下さい。

他球場の途中経過を入れるタイミングや様々なトピックスを漏らさないこだわり。一流の解説者の皆さんのトーク。そして臨場感、迫力。
「楽しく、優しく、激しく」20年前に自分のキャッチコピーで考えたものです。

ショウアップナイターリスナーに愛され続けた男が、新たなフィールドで得たものを、還元してくれる事に期待したい。


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