本塁打と打点でリーグ二冠のヤンキース・ジャッジ

◆ 本塁打が激増も…

 今季のメジャーリーグは、ヤンキース田中将大の「ボールが飛ぶ」発言に端を発し、「本塁打」の話題で持ちきりだ。実際、6月だけで過去最多となる1101本もの本塁打が乱れ飛んだ。

 これまでのシーズン最多記録は2000年の5693本。今季はこれを大幅に上回る6133本塁打ペースという驚異的な数字で本塁打が生まれている。メジャー史上初めてシーズン6000本塁打超えが現実味を帯びているのだ。

 打者目線でいえば、本塁打ほど効率の良い得点方法はない。打球がフェンスを越えれば、走者を追い抜かない限り、必ず得点が入るからだ。本塁打以外の出塁(三塁打、単打、四球など)は、失策や盗塁が絡まない限り、打者2人以上の力が必要となる。

 得点に直結する「本塁打」が大幅に増えている今季のメジャーリーグは「打高投低」なのだろうか。

◆ 得点でみると…

 得点という視点で見れば、今季は「打高投低」のシーズンとは言い切れない。30球団に拡張された1998年から今季までの20シーズンで、リーグ全体の9イニングあたりの得点数を調べると、今季(4.70)はほぼ中間にあたる9番目にすぎない。多くの本塁打が生まれてはいるものの、タイムリーなどによる得点はそれほど多くないことがわかる。

 その理由の一つが三振数の増加である。メジャーリーグでは2008年から9年連続でシーズン三振数記録が更新されている。これまでの最多は16年の38982個。今季はここまで40005個ペースだ。過去20年で最も少なかった2005年の30644個に比べると、30.5%も増加している。

◆ 投手目線では…

 投手目線で見ると、三振数増加は当然の結果である。三振以外にゴロアウト、フライアウトなど、アウトを取る方法は幾つかあるが、最も効率的なのが三振だ。打球がフェアゾーンに飛べば、野手の守備力や守備位置など運に左右されてしまう。会心の当たりが好捕されることもあるが、ボテボテの当たりが内野安打になることもある。ところが三振は、振り逃げを除けば出塁を許すことはない。

 何が言いたいかというと、現在のメジャーリーグでは、打者が最も効率の良い得点の取り方を、投手は最も効率の良いアウトの取り方を、それぞれ極めているということだ。

 僅か3年前の2014年、メジャーリーグはここ20年では最も「投高打低」のシーズンを送っていた。投手の多彩な変化球やデータに基づいた守備シフトなどが要因と考えられる。しかし15年以降、打者側は「本塁打を打つ」という対抗策に転じ、得点力アップを果たした。

 投手と打者は、野球史上、常に優位に立つためにお互いが知恵を振り絞ってきた。2017年時点で、打者は本塁打を打つこと、投手は三振を奪うことが「勝利」への最善の“方法”ということなのだろう。

文=八木遊(やぎ・ゆう)

【八木遊・プロフィール】 1976年、和歌山県出身。大学卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。 野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。日本にファンタジーベースボールを流行らせたいという構想を持ち続けている。

この記事を書いたのは

八木遊

1976年、和歌山県で生まれる。地元の高校を卒業後、野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。米国で大学を卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。

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