遅れてきた“88年組”
勝負の7月戦線に突入したプロ野球。セ・リーグでは全チームが72試合以上を消化し、シーズンも折り返して後半戦の戦いに突入したところであるが、個人成績表にちょっとしたサプライズが起こっている。
巨人の坂本勇人や中日の大島洋平、そして好調な広島・丸佳浩ら並み居る強打者を抑えて首位打者の座に就いているのが、DeNAの宮崎敏郎という男。プロ5年目の右打ち内野手だ。
プロ5年目といっても、大学・社会人を経て入団したため年齢は28歳。メジャーの舞台で活躍する田中将大や前田健太、日本でも坂本勇人や柳田悠岐といった球界をリードする選手を多く輩出している「華の88年組」の一員である。
ようやく掴んだチャンス
佐賀県立厳木(きゅうらぎ)高から日本文理大へと進み、そこから社会人・セガサミーに入団。2012年のドラフト会議で6位指名を受けてプロの門を叩いた。
全国大会とは縁が無い高校時代から、大学ではチームの主砲としてリーグ戦MVP、首位打者、ベストナインなどのタイトルを総なめ。全日本大学野球選手権でもベスト8進出に大きく貢献し、社会人野球でも都市対抗で本塁打を放つなど、徐々に頭角を現していく。
プロ入り後もいきなり春季キャンプで故障するなどスタートで躓いたものの、4月にはファームですでに中軸として活躍。5月の終わりに一軍昇格を果たすと、プロ初スタメンとなった6月2日の日本ハム戦では、第1打席でプロ初安打と初打点をマーク。さらに第4打席ではプロ初本塁打も放った。
以降も度重なる故障に苦しめられたが、昨季は自己最多の101試合に出場。規定打席には届かずも打率.291で11本塁打をマークし、首脳陣に持ち味の打棒をアピールした。
そして迎えた2017年シーズン、今年も4月に脇腹の故障で一時戦列を離れたものの、5月3日の復帰後は主に5番打者として定着。コンスタントに安打を積み重ね、気がつけばリーグトップの打率.336を記録している。
アレックス・ラミレス監督がかねてから言ってきた“筒香の後ろ”として申し分ない活躍を見せ、今では首脳陣からの信頼も厚い。あとは自身初の規定打席到達へ、いかにこのままの調子を保っていくことができるか。後半戦の大きな注目ポイントになる。
苦戦が続く社会人出身組
少し気は早いが、もしこのまま宮崎がセ・リーグの首位打者に輝いた場合、社会人出身野手としては2011年の長野久義(巨人)以来で実に6年ぶりのことになる。
即戦力としての期待が大きい社会人出身者であるが、タイトルを争うような活躍を見せる選手はなかなか表れない。以下は過去10年間の社会人出身野手のタイトルホルダーまとめ。
【社会人出身・タイトルホルダー】
※所属・登録名は当時のもの
<2007年>
盗塁王:片岡易之(西武)
<2008年>
盗塁王:片岡易之(西武)
<2009年>
盗塁王:片岡易之(西武)
<2010年>
最高出塁率:和田一浩(中日)
盗塁王:梵英心(広島)
盗塁王:本多雄一(ソフトバンク)
盗塁王:片岡易之(西武)
<2011年>
首位打者:長野久義(巨人)
盗塁王:本多雄一(ソフトバンク)
<2012年>
最多安打:長野久義(巨人)
盗塁王:大島洋平(中日)
過去10年で4名の盗塁王を輩出しているように、社会人出身者で近年成功を収めた選手というと「俊足巧打タイプ」が多い。打撃主要3部門で表彰を受けたのは2011年の首位打者・長野くらいで、2013年以降はタイトル獲得者が出ていないというのが現状だ。
彗星のごとく現れた“遅れてきたスラッガー”は、この苦戦の流れに終止符を打つことができるか。宮崎敏郎の後半戦から目が離せない。