鷹のブルペンに新星
逆転優勝を目指すチームに、また新たな力が頭角を現してきた。
キューバ出身の21歳リバン・モイネロ。2日の楽天戦で来日初白星を掴んだ若き左腕投手である。
マウンド上での落ち着きぶりから他の助っ人外国人投手と同じように見ているファンの方も多いかもしれないが、年齢も21歳とまだ若く、支配下登録されたのは6月16日。入団から数えてもまだ2カ月と経っておらず、驚くべきスピード出世といえる。
今年3月に行われた第4回WBCにはキューバ代表の一員として参加。中継ぎとして3試合に登板した。あれから2カ月ほどで日本のチームと契約し、夏には日本での1勝目を挙げているというのは本人でさえも想像できていなかったのではないか。
唯一の弱点を補う存在に
ソフトバンクのブルペン陣といえば絶対的守護神のデニス・サファテが後ろに控えており、その前を岩崎翔やベテランの五十嵐亮太、そして森唯斗といった勢いある投手が担当する。強力な布陣を敷いているのだが、そのなかでやや薄いと指摘されてきたのが“左腕”だった。
昨オフ、FAで森福允彦で退団。現在一軍にいる左腕は、モイネロを除くと先発も含めて嘉弥真新也ただ一人となっているような状況。その嘉弥真が好投を続けているとは言え、終盤の競った展開で“左殺し”のスペシャリストがいるのといないのでは安心感が違ってくる。
そこで、彗星のごとく現れたのがモイネロだった。順調に行けば夏場に支配下を、という目論見は良い意味で裏切られ、すでに一軍に定着。あまりのスピード出世にユニフォームが間に合わず、育成時代の背番号「143」をつけて帯同していたという時期もあった。
6月27日の日本ハム戦、6点リードの9回に来日初登板を果たすと、先頭に四球を与えながらも後続を3人斬り。上々の日本デビューを飾る。
さらに来日3戦目となった楽天戦では、2点ビハインドの7回二死三塁というピンチで登板。左の強打者であるカルロス・ペゲーロを見逃しの三振に仕留め、強打者相手のワンポイントとしても結果を残した。
すると8回に入ってチームが逆転。モイネロに4勝目の権利が転がり込み、晴れて来日初勝利を掴んだのだった。
力投を続ける嘉弥真とモイネロの2枚が揃えば、まさに鬼に金棒。特に首位の座を争っている楽天には茂木栄五郎やペゲーロ、岡島豪郎に銀次といった左の強打者・好打者が揃っているだけに、“左殺し”の価値はより大きくなる。
ブレイクの兆しを漂わせるキューバ人左腕は、チームを泣き所を埋める活躍で逆転優勝を手繰り寄せる力となるか。陰からソフトバンクを
支える新星・モイネロの活躍に注目だ。