初登板で完全試合
今年は8月7日(月)に開幕する『全国高校野球選手権大会』。聖地・甲子園への切符をかけた熱い戦いが全国各地で繰り広げられているが、そんななか岡山県で史上初の大記録が生まれた。
7月17日に倉敷市営球場で行われた1回戦、岡山大安寺-岡山御津の一戦で、岡山大安寺の1年生・中村源太が完全試合を達成したのだ。
この日が公式戦初出場だったという背番号「16」は、前日に先発を告げられると緊張から一睡もできず、食事も喉を通らないほどナーバスな状態になっていたという。
そんななかマウンドに登った小柄な右腕は、持ち味のコントロールで「低め」への意識を徹底。内野ゴロで12個のアウトを取り、奪三振も10。わずか97球で投げきる省エネ投球で快挙を成し遂げた。
殿堂入り大投手たちもできなかった大記録
春夏通じて甲子園出場経験のない公立校に現れたスーパー1年生。これだけでも十分引きは強かったのだが、注目すべきは“大会史上初”の部分だろう。
岡山県出身の名投手といえば、“カミソリシュート”でおなじみの平松政次。大洋で通算201勝を挙げ、野球殿堂入りを果たしたレジェンド投手である。
平松は岡山東商で甲子園に2度出場。1965年の春のセンバツでは29回連続無失点の大会新記録を樹立し、春日本一の立役者となった。しかし、そんな男でさえも、夏の県大会で完全試合を達成することはできなかった。
また、平松のライバルとしてしのぎを削り、のちにヤクルトでエースとして活躍する松岡弘も完全試合とは縁が無い。そしてその松岡の1学年先輩には星野仙一がいたが、実は高校時代は目立った実績を残していないのだ。
のちにプロで活躍する大投手たちをもってしても成し遂げられなかった大記録。これを1年生投手が、それも公式戦初登板でやってのけたとなれば注目されるのも当然のことだろう。
四球や失策も許されないとあって、達成には“運”が占める部分も大きい記録であるが、もちろんそれは土台に相手を打ち取る実力があってこそ。一躍時の人となった中村くんの今後に期待したい。