トッド・フレージャー

◆ これぞメジャー!な大型移籍

 メジャーの7月戦線といえば、グラウンド外での戦いも大きな注目を集める時期。ポストシーズンを見据えて戦っていくチームと、早くも来季へ向けた準備に移るチームに分かれ始めるところで、あっと驚くような移籍が起こるからだ。

 現地時間18日(日本時間19日)、ヤンキースとホワイトソックスの間で4対3の大型トレードが実現。ヤンキースはWBCアメリカ代表の中継ぎタイラー・クリッパードと有望株3名を放出し、強打の三塁手トッド・フレージャー、抑えのデービッド・ロバートソン、中継ぎのトミー・カンリーの3選手を獲得した。

◆ 大砲とリリーフを補強

 レッドソックス、レイズと熾烈な上位争いを繰り広げるヤンキースが大きな動きに出た。

 メジャートップの本塁打数を誇る新星アーロン・ジャッジを擁しながら、迫力不足が否めなかった打線のテコ入れにフレージャーを獲得。レッズ時代の2015年にはオールスターのホームランダービーで優勝した怪力を持ち、2015年はシーズン35発、そして昨季は40発をマークした右の大砲である。

 今季もここまで打率は.207に留まっているものの、本塁打は16本を記録。これはヤンキースではマット・ホリデーと並ぶ2位タイの数字だ。

 また、ロバートソンは3年ぶりのヤンキース復帰。ニューヨーク時代は絶対的守護神のマリアノ・リベラに繋ぐセットアッパーとして活躍し、2014年にはリベラの後釜として39セーブをマーク。ホワイトソックス移籍後もクローザーとして活躍し、2015年は34セーブ、昨季は37セーブをマークした。

 現在ヤンキースには“メジャー最速守護神”ことアロルディス・チャプマンがいるものの、このところピリッとしない投球内容が続いており、ファンも本人もフラストレーションを貯めている状態。かつての守護神を呼び戻し、万全を期す。

◆ ヤンキースの意気込み

 実はこれまで、フレージャーの動向を巡ってはヤンキースのライバルチームであるレッドソックス行きの声が大きかった。

 現在ア・リーグ東地区首位を走るチームはパブロ・サンドバルを戦力外とし、この夏の三塁手の補強はほぼ確実だろうというのが現地メディアの見方。そこで記者たちが勧める選手の筆頭としてフレージャーの名前が挙がっていたのだ。

 リーグ2位のチーム打率.264を誇る強力レッドソックス打線であるが、チーム本塁打はリーグワーストで唯一2ケタ台の97本。デービッド・オルティスが引退した今季は、ここまでのチームトップがムーキー・ベッツの17本と長打力不足が弱点として指摘されている。

 そんな中、フタを開けてみれば“噂の大砲”を獲得したのはヤンキース。本当にレッドソックスがフレージャー獲得に乗り出していたかどうかは定かではないものの、今回の補強はライバルチームに与えた衝撃も大きなものとなったのではないか。

 しかし、ヤンキースは大物獲得の代償として、実績十分のタイラー・クリッパードのほかに昨年のドラフト1巡目で獲得した超有望株のブレイク・ラザフォード、2013年のドラフト1巡目イアン・クラーキン、そして今春のWBCではコロンビア代表としてプレーした22歳のティト・ポロを放出。払ったものも大きいが、それだけヤンキースが今季にかけているということだ。

 今回の大型トレードが熾烈なア・リーグ東地区の戦いにどんな影響を及ぼすのか。ここからの争いがますますたのしみだ。

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