◆ シーズン途中の移籍でタイトルを逃すことも…
ドジャースのダルビッシュ有が圧巻の投球を見せた。4日(日本時間5日)のメッツ戦で移籍後初登板を果たすと、7回を投げ、無失点、10三振を奪う好投を披露。ドジャースの一員として幸先良いスタートを切った。
メジャーでは、ダルビッシュのようなエース級の選手がシーズン途中に放出されることも決して珍しくない。基本的にはプレーオフを見据えるチームが、若手の有望株と引き換えに下位チームから実績豊富な選手を獲得するのが一般的だ。
最近では2014年途中にデビッド・プライス(現レッドソックス)がレイズからタイガースに移籍。翌15年途中には、タイガースからブルージェイズに移籍し、いずれの年もチームのプレーオフ進出に貢献している。
プライスは、14年にア・リーグ奪三振王、15年には・ア・リーグで最優秀防御率にも輝いた。プライスの場合は、移籍先のチームがすべて同じア・リーグだったことが幸いし、個人タイトルを獲得できた。しかし、今回のダルビッシュのようにリーグ間移籍だったがために個人タイトルを逃してしまったケースも過去に起こっている。
1997年のマーク・マグワイアがその一人だ。その年、マグワイアは開幕からアスレチックスで本塁打を量産。105試合に出場し、34本塁打を記録していた。しかしトレード期限が迫った7月下旬に若手選手と交換でカージナルスに移籍。すると本塁打ペースはさらに上がり、51試合で24本ものアーチを描いた。
マグワイアは結局、その年メジャー最多となる58本塁打を放ったが、ア・リーグからナ・リーグへの移籍だったため、本塁打王のタイトルは逃してしまった。ア・リーグは56本塁打のケン・グリフィー・ジュニア(当時マリナーズ)が、ナ・リーグは49本塁打を放ったラリー・ウォーカー(当時ロッキーズ)がそれぞれのリーグで本塁打王に輝いた。
翌1998年には、ランディ・ジョンソンが同じ憂き目に遭った。その年、ジョンソンはマリナーズからアストロズ(当時はナ・リーグ)に途中移籍。合計329三振はその年のどの投手よりも多かったが、こちらもリーグ間移籍のためタイトル奪取はならず。
今季のダルビッシュはレンジャーズで個人タイトルを狙える数字を残していたわけではないが、リーグ間移籍による弊害も珍しくないことがわかる。
ちなみに98年のジョンソンはシーズン前半のマリナーズでは9勝10敗、防御率4.33と不調だったが、アストロズへ移籍後は10勝1敗、防御率1.28という圧倒的な成績を残した。
今季、レンジャーズでは決して納得のいく成績を残せなかったダルビッシュ。心機一転、ナ・リーグでは1998年にジョンソンが見せたような大活躍を期待したい。
文=八木遊(やぎ・ゆう)