高校時代はバッテリーを組んでいた野村祐輔と小林誠司(C)KYODO NEWS IMAGES

◆ かつてのチームメイトもプロではライバル

 8月8日に開幕した『第99回全国高校野球選手権大会』も、いよいよ決勝戦を残すのみとなった。今年は例年以上に本塁打が飛び交う大会となっており、なかでも広陵の中村奨成が大会通算本塁打の新記録を達成するなど、盛り上がりを見せている。

 この甲子園大会をはじめとして、高校野球で活躍した後にプロ入りする選手は数多く、かつてのチームメイトがプロの世界で対決することも珍しくない。もちろんそこには、同じ釜の飯を食ったチームメイト以外にも、“先輩と後輩”という立ち位置での対決も存在する。

 そこで今回は、今夏の甲子園大会に出場した高校のなかでも現役プロ野球選手が特に多い横浜、大阪桐蔭、広陵の3校に注目。プロ入り後の“先輩・後輩対決”をまとめてみた。

◆ 年長選手が活躍する傾向あり?

 今回は直近3シーズン(2015年~2017年8月21日まで)に実現した“先輩・後輩対決”の対戦成績を集計。3校の傾向はどうなったのか、以下にまとめた。

▼ 横浜(神奈川)
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・成瀬善久(ヤクルト) vs.
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後藤武敏(DeNA)   率1.000(1-1)
下水流昴(広島)   率1.000(1-1)
筒香嘉智(DeNA)   率.364(11-4) ☆本塁打1
倉本寿彦(DeNA)   率.142(7-1)
荒波 翔(DeNA)   率.000(1-0)
浅間大基(日本ハム) 率.000(2-0)
近藤健介(日本ハム) 率.000(4-0)
福田永将(中日)   率.000(8-0)
石川雄洋(DeNA)   率.000(12-0)

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・涌井秀章(ロッテ) vs.
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石川雄洋(DeNA)   率.333(3-1)
近藤健介(日本ハム) 率.278(18-5)
倉本寿彦(DeNA)   率.250(4-1)
筒香嘉智(DeNA)   率.000(2-0)
浅間大基(日本ハム) 率.000(3-0)

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・柳 裕也(中日) vs.
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筒香嘉智(DeNA) 率.500(2-1)
石川雄洋(DeNA) 率.333(3-1)
倉本寿彦(DeNA) 率.333(3-1)

 今夏は超高校級スラッガーの増田珠を筆頭に、2年の万波中正らを擁した強力打線で臨んだ横浜。しかし、いきなり甲子園3季連続ベスト4の実績を誇る秀岳館(熊本)とぶつかる不運もあって初戦で敗れた。

 出身選手同士の対戦成績を見てみると、成瀬は同学年の荒波と4人の後輩は完璧に封じている一方、筒香にはやや打ち込まれている。涌井は筒香を2打数無安打に封じているものの、成瀬が12打数無安打と抑え込んでいる石川には3打数で1安打を許している。

▼ 大阪桐蔭(大阪)
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・岩田 稔(阪神) vs.
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平田良介(中日)   率.154(13-2)
中田 翔(日本ハム) 率.000(4-0)

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・藤浪晋太郎(阪神) vs.
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平田良介(中日)  率.389(18-7) ☆本塁打1

 史上初・2度目の春夏連覇を目指した大阪桐蔭は、優勝候補の筆頭として注目を集めたものの、仙台育英にサヨナラ負け。一時は勝利を掴んだかに思われた直後の逆転負けという悲劇の結末は記憶に新しいところだ。

 近年多くのプロ野球選手を輩出している印象があるが、出身選手は野手に偏り気味。それも現役で一軍での登板経験があるのは阪神の岩田と藤浪の2人だけとなっており、中田翔や中村剛也、浅村栄斗といったパ・リーグ所属選手との対戦も少ないため、想像以上にデータが少なくなっている。

 そのなかで目立つのが、藤浪晋太郎のvs.平田の成績。7学年上の大先輩に委縮してしまうのか、平田が藤浪を完全に打ち込んでいる印象だ。一方でその平田のさらに先輩にあたる岩田は、平田を13打数2安打とよく抑えている。

▼ 広陵(広島)
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・中田 廉(広島) vs.
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佐野恵太(DeNA) 率1.000(1-1)
俊 介 (阪神) 率1.000(1-1)
上本博紀(阪神) 率.333(3-1) ☆本塁打1
小林誠司(巨人) 率.000(3-0)

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・西村健太朗(巨人) vs.
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上本博紀(阪神) 率.000(3-0)
俊 介 (阪神) 率.—(0-0) ☆四球1

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・野村祐輔(広島) vs.
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上本博紀(阪神) 率.250(8-2)
小林誠司(巨人) 率.125(12-2)
俊 介 (阪神) 率.000(3-0)

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・吉川光夫(巨人) vs.
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上本博紀(阪神) 率.000(5-0)
新井良太(阪神) 率.000(3-0)
小林誠司(巨人) 率.000(2-0)
俊 介 (阪神) 率.000(2-0)

 10年ぶりの決勝進出を果たした広陵。過去3度も決勝で敗れた経験をもち、今度こそ悲願の初優勝を目指す。
 
 現役の出身選手の対戦成績を見ると、世代に関係なく投手が圧倒的に優勢。辛うじて上本が気を吐いてはいるが、4投手合わせて19打数3安打はやはり寂しい。

 ちなみに、10年前の甲子園で広陵を準優勝に導いた時のバッテリーが野村祐輔と小林誠司。プロ入り後は広島と巨人というライバルチームの所属となったが、プロ入りでは“先輩”の野村が押さえ込んでいる。

 こうして調べてみると、対戦数が限られていることもあってやはり全体的に投手が優勢。そして先輩選手になればなるほど好成績を挙げる傾向が強いことがわかる。勝負の世界とはいえ、先輩・後輩の関係性がこうして数字に現れるというのは興味深い。

 上記選手たちの今後の対戦はもちろんのこと、今年の甲子園で活躍した選手たちのプロ入り後にも注目してみたい。

文=福嶌 弘(ふくしま・ひろし)

【福嶌弘・プロフィール】
1986年、神奈川県生まれ。バイク・クルマの雑誌の編集部を経て2015年からフリーライターに。父が歌う「闘魂込めて」を聴いて育ったため、横浜出身ながら生来の巨人ファン。『甲子園名門野球部の練習法』(宝島社)『プロ野球2017 シーズン大展望』(洋泉社)、『がっつり!甲子園2017』(日本文芸社)などに執筆。

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福嶌弘

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