打者の活躍が目立った大会で…
8月8日に開幕した『第99回全国高校野球選手権大会』が23日に閉幕。決勝戦は広陵(広島)と花咲徳栄(埼玉)という顔合わせとなり、花咲徳栄が悲願の初優勝を掴んだ。
今大会は広陵の中村奨成が1大会最多の6本塁打を記録するなど、大会全体でも過去最多を更新する合計68本もの本塁打が飛び交う打撃戦に。「ボールを変えたのでは…?」という声まで挙がるほど、打者のパワーが目立った大会となった。
その一方、投手で気になったのが「背番号1以外の投手がマウンドにいるシーンが多い」ということ。プロ野球では投手分業制が当たり前になった現代。高校球界でも球数制限の導入やタイブレークの導入といった新ルールの必要性が議論に挙がる中、投手分業制の波が徐々に押し寄せてきている。
たとえば、昨年は初戦突破24校のうち、先発投手の完投勝利で勝ち上がった学校が半数以下の10校しかなかったことが話題に。高校野球新時代の象徴的な出来事として報じられた。
それが今大会を見てみると、初戦を突破した25校のうち、完投勝利で勝ち上がったのは9校。少ないと話題になった昨年よりも1校減っている。
さらに3投手以上の継投で勝ち上がったチームも、昨年の4校から1校増えて5校に。大会を通しての投手の登板人数も、昨年は119人だったのが今年は130人に増加。一人のスーパーエースで勝ち切る時代から、2枚ないし3枚の看板を立てて戦っていくというチームが着実に増えているのだ。
【2017甲子園・各校初戦の完投勝利】
増居翔太(彦根東) 1回戦(vs.波佐見)
平松竜也(盛岡大付) 1回戦(vs.作新学院)
青柳真珠(松商学園) 1回戦(vs.土浦日大)
斎藤郁也(聖光学院) 1回戦(vs.おかやま山陽) ☆完封
戸郷翔征(聖心ウルスラ学園) 1回戦(vs.早稲田佐賀)
坂根佑真(天理) 2回戦(vs.大垣日大) ☆完封
佐藤圭悟(三本松) 2回戦(vs.下関国際)
松本健吾(東海大菅生) 2回戦(vs.高岡商)
斉藤勇太(青森山田) 2回戦(vs.彦根東)
継投が当たり前の時代に…?
思い返してみると昨年の優勝校・作新学院(栃木)には今井達也という大エースがおり、準優勝の北海(南北海道)にも大西健斗という大黒柱がいた。全試合完投はなかったとはいえ、ほとんどを背番号1が投げて勝ち上がってきた2チームの対戦だった。
ところが、今年の決勝戦は平元銀次郎と山本雅也のW左腕で勝ち上がってきた広陵と、綱脇慧から清水達也という方程式で勝ち上がってきた花咲徳栄という対戦に。決勝戦で両チームとも継投策を採った(どちらも先発が完投しなかった)のは、2005年の駒大苫小牧-京都外大西以来で実に12年ぶりのことだ。
もっと言えば、広陵も花咲徳栄もともに今大会の完投が0。大会を通して完投ゼロでの優勝は2004年の駒大苫小牧以来で13年ぶり。完投ゼロ同士の決勝戦となると、2000年以降では初のことであった。
過酷な夏を一人で投げ抜く背番号1が礼賛される時代から、複数の投手を駆使した“投手陣”で戦う時代へ…。来年で100回の節目を迎える夏の甲子園。『投手起用』から見える時代の移り変わりに注目だ。