10年目の開花
37年ぶりの連覇がいよいよ目の前に迫ってきた。
広島は13日のDeNA戦で12-4と大勝。同日にマジック対象の阪神が敗れたため、優勝マジックは一気に2つ減って「2」。14日の試合でも同じように広島が勝利し、阪神が負けると、その瞬間に広島のリーグ連覇が決まる。
広島の勢いを加速させているのが、プロ10年目を迎えた安部友裕の存在だ。
2007年の高校生ドラフト1位で入団も、長らく守備固めや代走での起用がメインだったが、昨季は『対右投手時の三塁手』のポジションを確立。自己最多の115試合に出場を果たし、規定打席こそ届かずも打率.282、6本塁打と飛躍の足がかりを作った。
そして迎えた今季も序盤は対右での出番がメインだったが、5月からはクリーンナップの一角を任されるなどレギュラーに定着。ここまでで昨季を上回る119試合に出場し、打率はリーグ3位の.313。トップのマギー(巨人)が.320であることを考えると、首位打者も十分に射程圏と言える。
【セ・リーグ打率ランキング】
1位 .320 マギー(巨人)
2位 .316 宮崎敏郎(DeNA)
3位 .313 安部友裕(広島)
(※9月13日現在)
首位打者へのカギは…
チームを牽引する田中広輔、菊池涼介、丸佳浩と同じ“89世代”。今や不動のレギュラーとなった彼らと比べると頭角を現すまでには時間を要したが、ここに来てドラ1指名を受けたその素質に偽りがなかったことを証明している。
特にこの終盤に来ての活躍ぶりは凄まじく、8月以降は32試合で打率.330、3本塁打、17打点と躍動。なかでもチームが負けている劣勢の状況での活躍が光り、9月5日からの2位・阪神との直接対決では初戦で逆転サヨナラ2ランを放つなど、3試合合計で打率.537、7打点の大暴れ。優勝を大きく手繰り寄せる3連勝の立役者となった。
そんな男の課題を挙げるとすれば、『対左』というのがひとつのポイントになる。以下は今季の安部の左右別成績。
【安部友裕・左右別成績】
対右:率.340(300-102) 本4 点35
対左:率.235(102- 24) 本0 点14
これまで起用法が限定的だったように、右投手には滅法強いものの左投手が相手だとからっきし。その傾向は今季も顕著だ。
ちなみに、対右投手の打率.340というのは規定到達者のなかではリーグトップの成績。左投手からもコンスタントに結果が残せるようになれば、首位打者という勲章も自然と近づいてくることだろう。
広島を牽引する“遅れてきた89世代”安部友裕から目が離せない。