投打に若手が躍動
優勝マジックはいよいよ「1」。広島37年ぶりの連覇が目前に迫ってきた。
14日にマツダスタジアムで行われたDeNA戦は、目まぐるしい点の取り合いの末に5-4で勝利。阪神が巨人と引き分けたために胴上げは持ち越しとなったが、16日(土)の試合で勝てば文句なしの優勝決定。26年ぶりの本拠地胴上げへ期待が高まっている。
チャンピオンチームとして2017年を迎えた広島。戦前の予想では、巨人が大型補強を敢行したことや、「昨季は出来過ぎだった」という見立てから、今季は苦戦を強いられるのではないかという声も少なくなく、連覇を予想する解説者・OBはそれほど多くなかった。
それがフタを開けてみれば2年連続の首位快走。黒田博樹という大黒柱が抜けた先発陣では、薮田和樹が14勝を挙げる大ブレイク。期待の2年目右腕・岡田明丈も12勝をマークし、ほかにも昨季の最多勝右腕の野村祐輔、大瀬良大地に加えて中継ぎも兼ねる九里亜蓮がそれぞれ9勝と、ドラフト上位で獲得した若き才能が躍動した。
打線もすっかりチームの顔になった“タナキクマル”こと田中広輔・菊池涼介・丸佳浩の上位に、今季は4番・鈴木誠也が定着。鈴木は故障で今季絶望となってしまったが、代役に抜擢された松山竜平や安部友裕の活躍もあって不在を感じさせない強さを発揮。ここまでのチーム打率.275、本塁打146、盗塁数107、犠打数108、犠飛数43、四死球数528、得点圏打率.297はいずれもリーグトップの成績を誇っている。
不安を振り払った指揮官の“即決”
こうして見ると投打にスキのないように見える広島であるが、暗雲が立ち込めた時期もある。
他を寄せ付けない強さで突き進んできたチームだが、8月は27試合で12勝13敗2分の負け越し。特に8月22日から24日の対DeNA3連戦で喫した3試合連続サヨナラ負けという悪夢は衝撃的で、その期間に鈴木が負傷離脱したことも重なり、初めて暗いムードになりかけた。
そんな時、緒方孝市監督はひとつの決断を下す。これまでストッパーを任せていた今村猛を中継ぎに配置転換し、昨季までの守護神・中崎翔太をストッパーに戻したのだ。
昨季は61試合の登板で34セーブを挙げ、チームの優勝に大きく貢献した中崎だったが、今季は開幕直後の4月10日に故障で戦線離脱。その代役として抑えに回ったのが今村だった。
今村は中崎抹消直後の4月11日に今季初セーブを挙げると、その後も安定した投球で9回に定着。5月23日に中崎が復帰して以降も持ち場は変えずに起用してきたが、DeNAとの3連戦初戦を落とした翌日からスパッとその2人の役割を入れ替えた。
【広島・救援陣成績比較】
8月:防御率2.66 1勝6敗6セーブ
9月:防御率1.52 6勝0敗5セーブ
開幕からフル回転だったリリーフに疲れが見えた8月は、救援防御率こそリーグトップの2.66という数字を記録するも、月間13敗のうち6敗がリリーフ陣についた。それが配置転換後の9月はリリーフだけで6勝を挙げ、防御率は1.52という驚異的な数字に。マジック減らしを加速させる大きな原動力となっている。
指揮官の迷いない決断がピンチを好転させ、チームにさらなる勢いをもたらした。この決断は優勝決定後に控える短期決戦を見据えたうえでも大きなプラスとなるだろう。
37年ぶりのリーグ連覇と、昨年届かなかった日本一へ…。緒方カープの挑戦はつづく。