シーズンも残り10試合を切って…
9月も終わりが近づき、セ・リーグは全チームの残り試合が1ケタ台に突入。しかし、依然としてクライマックスシリーズで広島に挑む2チームは決定していない。
現在2位の阪神は3位・DeNAに4.5ゲーム差をつけており、CS確定は目前。このまま行けば2位は堅いものの、最後の1枠に関してはDeNAと巨人が1.5ゲーム差で競っており、予断を許さない状況となっている。
ただし、1.5差といえど両者の直接対決はすでに終わっており、巨人の自力CS進出は消滅している。DeNAのCSへのクリンチナンバーは「5.5」で、残り8試合のうち6つ取れば巨人の結果に関わらずCS進出を決めることができる。
互いに負けられない戦い。DeNAのキーマンとなるのが、井納翔一だ。
ここ一番で頼りになる男
今季で5年目を迎える社会人出の右腕であるが、シーズン通して勝ち越したのは2014年(11勝9敗)の1度だけ。安定感はないが、年に数度は試合を支配するような投球を披露する。そんな掴みどころのない投手だ。
指揮官も「まばたきしているうちに点を取られていることがよくある」と冗談半分で話すが、ここ一番に強い「不思議な選手」として信頼は厚い。
3位の座を争う巨人との今季最後の直接対決2連戦。その重要な初戦を任せたのが“不思議な選手”こと井納だった。後半戦は1勝5敗と精彩を欠いていた右腕だが、この日は立ち上がりから気迫あふれる投球で巨人打線を圧倒。6回まで5安打、2四死球の無失点に抑える好投を見せると、チームは梶谷隆幸のソロで挙げた1点を投手リレーで守り抜き、1-0で勝利を掴んだ。
井納のこの日にかける想いは、登板前のお決まりのルーティーンからも垣間見ることができた。右腕は毎回、マウンドに上がる直前に地面に文字を書く。恒例の願掛けはこの日も忘れずに行われており、書かれた文字は『決闘』だった。
今季を占う大事な一戦。特に後半戦苦しんでいた右腕にとっては生きるか、死ぬか…生死をかけた戦い。対峙する打者23人との“決闘”だったのだ。
思えば、これまでも大一番で力を発揮してきたタイプ。昨季は山口俊の代役として急遽開幕投手となるも、7回無失点の快投で後に優勝する広島から勝利。またチームとして初出場となったCSでもファーストステージの巨人戦、ファイナルステージの広島戦と2連勝。勝負どころでこそ力を発揮してきた。
ここ一番で頼りになる“不思議な男”。Aクラス死守、そしてポストシーズンを戦い抜く上で井納翔一の力は欠かせない。