田中広輔 ,
驚異的な活躍でCS・MVPを受賞した広島の田中広輔(C)KYODO NEWS IMAGES

◆ 思わぬラッキーボーイが飛び出すことも…

 10月10日をもって、2017年のプロ野球レギュラーシーズン全日程が終了した。セ・リーグでは圧巻の強さを見せた広島が37年ぶりの連覇を果たし、パ・リーグはソフトバンクが94勝を挙げる独走で2年ぶりにペナントレースを制した。

 ペナントレースが終了すると、間もなくクライマックスシリーズ(以下CS)がはじまる。セ・パのAクラスに入った6チームが日本シリーズの出場権をかけ、負けられない戦いに挑んでいく。

 ペナントレースの全日程が終了したわずか4日後、14日からは2位と3位のチームがぶつかり合うファーストステージが開幕。先に2勝を挙げたチームが勝ち上がりとなり、優勝チームとのセカンドステージに臨むといった流れだ。

 短期決戦なだけに、実績よりも調子がモノを言うのがCSの特徴。過去を振り返れば、2004年には三冠王に輝いた松中信彦が大ブレーキとなり、シーズンを1位で通過したダイエーが敗退。逆に2010年には、3位通過のロッテが西岡剛や今江敏晃らの大活躍によって“下剋上”を果たしている。

 短期決戦に心強い『CS男』は誰なのか。セ・パ6チームの主な打者による過去5年のCS打率(10打数以上)について調べてみた。

◆ スラッガータイプは苦しみがち…?

 まずはセ・リーグの広島、阪神、DeNAの3チームを見てみよう。カッコ内はCS出場年を現している。

▼ 広島(2013・2014・2016)
【過去5年のCS打率トップ3】
1位 .833 田中広輔(12-10/本1)
2位 .300 菊池涼介(40-12)
3位 .261 新井貴浩(23-6)

 異次元の成績を残しているのが、切り込み隊長の田中広輔。出場したのは昨季のファイナルステージのみだが、ほとんどの打席で出塁。6得点をマークするなど、シーズン以上の活躍を見せた。

 また、CS中の田中は長打も多く、2戦目の本塁打を含めて二塁打以上の長打が4本。OPSは破格の1.333をマークしている。その他、サンプル数が少ないために除外としたなかでは、岩本貴裕もCS通算5打数2安打、1本塁打で打率.400を記録。代打の切り札として最適な存在と言えるだろう。

▼ 阪神(2013・2014・2015)
【過去5年のCS打率トップ3】
1位 .326 鳥谷 敬(43-14)
2位 .324 西岡 剛(37-12/本1)
3位 .264 上本博紀(34-9)

 2年ぶりにCSに進出した阪神だが、現在の主力選手で過去5年のCSに出場していた主な選手というと上記の3人と、打率.264(38-10/3本塁打)の福留孝介のみ。鳥谷敬の安定感はさすがの一言で、レギュラーシーズンと勝るとも劣らない成績を残している。

 ちなみに、FAで加入した糸井嘉男の過去5年のCS成績は打率.190(21-4)。2本塁打を放っているとはいえ、物足りない数字となっている。

▼ DeNA(2016)
【過去5年のCS打率トップ3】
1位 .333 宮崎敏郎(21-7)
2位 .308 倉本寿彦(26-8)
3位 .300 石川雄洋(10-3)

 ほとんどの選手が昨年のCSのみの成績だが、ここでも今季の首位打者・宮崎敏郎が貫録のチームトップ。広島を相手にしたファイナルステージの方が好調をキープしていたようで、この間の打率は驚異の.455をマークしていた。今年は首位打者として迎える大舞台。立場が変わっても、変わらず成績を挙げることができるだろうか。

◆ “熱男”よりもCSで熱い男がいた!

 続いてはパ・リーグの3チームを見てみよう。

▼ ソフトバンク(2012・2014・2015・2016)
【過去5年のCS打率トップ3】
1位 .353 内川聖一(85-30/本1)
2位 .265 松田宣浩(83-22/本3)
3位 .250 本多雄一(48-12)

 実は通算打率.209(67-14)の柳田悠岐をはじめ、意外なことに苦しい成績となっている選手が多いソフトバンク。松田宣浩は昨年の大爆発が記憶に新しいが、それ以前のマイナス分があってトップ3入りはならなかった。

 そんななかで異彩を放っているのが、内川聖一の好成績だ。骨折により一時は出場が危ぶまれたが、シーズン最終盤で復帰。頼れる男が帰ってきたのは大きなプラスとなる。

▼ 西武(2012・2013)
【過去5年のCS打率トップ3】
1位 .364 鬼崎裕司(11打数4安打)
2位 .347 浅村栄斗(23打数8安打)
3位 .267 炭谷銀仁朗(15打数4安打)

 4年ぶりのCSとなる西武は主力選手が大きく変わり、現在でも残っているのが上記の選手たちと中村剛也(20-5/本2)くらい。秋山翔吾もブレイク前だったこともあり、CS通算では.200(20-4)と振るわない。

 となると、やはり期待するのは若手の台頭。過去5年のトップ・鬼崎裕司はつい先日戦力外通告を言い渡されたが、生まれ変わったチームで遊撃手のレギュラーを掴んだルーキー・源田壮亮の躍動に期待したい。

▼ 楽天(2013年)
【過去5年のCS打率トップ3】
1位 .416 銀次(12-5/本1)
2位 .294 岡島豪郎(17-5)
3位 .250 細川 亨(36-9/本1)
3位 .250 藤田一也(12-3)

 楽天も2013年以来のCS進出。当時は主力メンバーの中にジョーンズ、マギーらがいたが、現在残った選手たちの中では銀次が圧倒的な好成績を残していた。

 あとは初のCSとなる茂木やペゲーロ、ウィーラーといった中軸どころがどんなパフォーマンスを見せるか。ペゲーロは対西武で打率.321、本塁打6とよく打っていただけに期待も高まる。

文=福嶌弘(ふくしま・ひろし)

【福嶌弘・プロフィール】 1986年、神奈川県生まれ。バイク・クルマの雑誌の編集部を経て2015年からフリーライターに。父が歌う「闘魂込めて」を聴いて育ったため、横浜出身ながら生来の巨人ファン。『甲子園名門野球部の練習法』(宝島社)『プロ野球2017 シーズン大展望』(洋泉社)、『がっつり!プロ野球』(日本文芸社)などに執筆。

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