全項目クリアは2011年以降ゼロ…
日本における投手最高の栄誉『沢村賞』の受賞者が30日に発表され、今年は巨人の菅野智之が選出された。
プロ野球黎明期の大投手・沢村栄治氏の栄誉と功績を称えて制定された特別表彰。主に先発完投型の投手に贈られる賞として1947年から始まり、2リーグ制となった1950年以降はセ・リーグ所属投手が対象であったが、1989年からはセ・パ関係なく全球団から選出されるようになった。
この『沢村賞』には7つの大きな選考基準が存在し、それを大きな指針として5人の選考委員(※敬称略:堀内恒夫、平松政次、村田兆治、北別府学、山田久志)を中心に決定していく。7つの選考基準は以下の通り。
【沢村賞・選考基準】
(1)15勝以上
(2)150奪三振以上
(3)10完投以上
(4)防御率2.50以下
(5)投球回200イニング以上
(6)25試合以上の登板
(7)勝率6割以上
しかし、投手分業制が進む近年の野球界において、「10完投以上」や「投球回200イニング以上」といった部分は至難の業に。実際、全項目をクリアしての沢村賞受賞は2011年の田中将大(当時楽天)を最後に出ていないのだ。
ここ数年は選考基準の見直しを求める声も多く挙がっていたが、そんななかで選考委員会の委員長を務める堀内恒夫氏が注目の発言をした。「沢村賞の基準で定めたクオリティ・スタート(以下QS)を、評価基準に“補足的”に盛り込む」方向で進んでいるという。
沢村賞QSに注目
QSとは、先発投手を評価する材料のひとつとして用いられる指標。「先発投手が6イニング以上を投げ、かつ3自責点以内に抑えた」ときに記録されるもので、データ分析が進むアメリカはもちろんのこと、近年は日本でも浸透してきている記録である。
しかし、今回堀内委員長が提案しているのは「7イニング以上を投げて自責点3以内」というもの。そこが上述の「沢村賞の基準で定めた」という一文にあたるところで、いわゆる一般的なQSよりも1イニング長く投げることが求められる。
来季から注目を集めるであろう“沢村賞QS”。今季の各リーグの達成数上位は以下の通りだ。
【沢村賞QS・達成回数】
▼ セ・リーグ
1位 19回 菅野智之(巨人/76.0%)
1位 19回 マイコラス(巨人/70.3%)
3位 13回 田口麗斗(巨人/50.0%)
4位 11回 メッセンジャー(阪神/50.0%)
5位 10回 秋山拓巳(阪神/40.0%)
5位 10回 野村祐輔(広島/40.0%)
▼ パ・リーグ
1位 19回 菊池雄星(西武/70.3%)
2位 15回 則本昂大(楽天/60.0%)
2位 15回 金子千尋(オリックス/55.5%)
4位 14回 岸 孝之(楽天/53.8%)
5位 12回 二木康太(ロッテ/52.1%)
最多はセ・パともに19回。沢村賞を受賞した菅野のほか、チームメイトのマイコラスと、沢村賞レースを盛り上げた西武の菊池雄星だった。
リリーフ陣が強いチームほど先発投手が6回までで降板するというケースも多く、本来のQSを17回記録している千賀滉大や、同じく17回のバンデンハークといったところがランク外となる。
あくまでもオリジナルの7項目を軸としたうえで、新たに加わる“補足”項目。来季は「7回以上3自責点以内」というハードルに注目だ。