◆ 世界一・アストロズを支えたドラフト戦略
日本シリーズより一足先に2017年のメジャーリーグが幕を閉じた。アストロズとドジャースによって争われたワールドシリーズは第7戦までもつれ込み、最後はアストロズが意地を見せ世界一に輝いた。
アストロズは、1962年に創設されたエクスパンションチームの一つ。“同期”のメッツはリーグ優勝5回、ワールドシリーズ優勝を2回誇る一方で、アストロズは2005年にリーグ優勝が1度あるだけだった。今季は12年ぶり2度目のリーグ制覇から一気に頂点まで駆け上がった。
2013年にナ・リーグ中地区からア・リーグ西地区に移動したアストロズ。2011年からの3シーズンは順に106敗、107敗、111敗。当時はまさにどん底にあえいでいた。
しかし、それと引き換えに毎年のようにドラフトの上位指名権を得ていた。結果的に、今年のアストロズの屋台骨となったのが、低迷期のドラフトで上位指名された選手たちだった。
ワールドシリーズでMVPに輝いたジョージ・スプリンガー(2011年1巡目全体11位)、不動の4番カルロス・コレア(12年全体1位)、ワールドシリーズ第5戦でサヨナラ打を放ったアレックス・ブレグマン(15年全体2位)などがいなければ今季の飛躍はなかっただろう。
◆ 今後は3~5年後に世界一を狙うパターンが主流になる?
アストロズのように、数年の低迷を経て3~5年後の世界一を狙うパターン(中期計画)が今後の主流になるかもしれない。特にスモールマーケットの球団はそうせざるを得ない部分もあるだろう。最近では、ロイヤルズも同じように低迷期を経て、2014年から2年連続でワールドシリーズに出場した(15年に制覇)。
では数年後に第2のロイヤルズ、アストロズとなるチームはあるのだろうか。ここ数年、低迷が続くチームは決して少なくないが、ア・リーグからホワイトソックス、ナ・リーグからはフィリーズの2球団を“第2のアストロズ候補”に挙げたい。
ホワイトソックスは、近年のドラフト上位で有望株を指名しつつ、トレードでも若返りを図っている。特に投手と外野手に逸材がそろっており、2020年前後に大挙花を咲かせる可能性がある。
フィリーズは、捕手、二塁手、遊撃手、中堅手とセンターラインを務める有望株がそろっている。また今年8月にデビューし、50試合で18本塁打を放ったリース・ホスキンスは来季以降、さらなる成長曲線を描く可能性も十分ある。ホワイトソックスよりやや早い2019年には世界一を目指せるチームになるのではないだろうか。
難しいのは、若手の有望株をそろえただけでは世界一の称号を簡単に手にすることはできないというところ。今年のアストロズは若手をチームの中心に据えつつも、ベテランを融合させ、ジャスティン・バーランダー獲得が最後のピースとなった。次に“中期計画”を遂行できるのは一体どのチームになるだろうか。
文=八木遊(やぎ・ゆう)