「監督の賞」じゃなかった!
11月9日、今年の「正力松太郎賞」受賞者が決定。ソフトバンクのデニス・サファテが選出されて大きな話題となった。
「正力松太郎賞」とは、現代日本プロ野球の生みの親として知られる正力松太郎氏(元読売新聞社社主)の功績を讃える賞として1977年に創設。『プロ野球の発展に大きく貢献した人物(監督・コーチ・選手・審判)』に贈られる。
“人物”となっているものの、近年は日本シリーズを制したチームの監督に贈られることが通例となっていた。そのため、今回も日本一に輝いたソフトバンク・工藤公康監督が受賞するものなのだと誰もが思い、球団も発表に備えて会見の準備をしていたほどだ。
ところが、フタを開けてみればサファテが受賞。大きなサプライズとなった。
選手の受賞は2012年に原辰徳監督とともに受賞した阿部慎之助(巨人)以来であるが、選手“単独”での受賞となると2000年の松井秀喜(巨人)以来で実に17年ぶり。抑え投手としては、1998年の佐々木主浩(横浜)以来で19年ぶりのこと。また、外国人としては2005年のボビー・バレンタイン氏(ロッテ)以来の受賞となったが、“外国人選手”としては史上初の快挙である。
【2000年以降・正力松太郎賞受賞者】
2000年 松井秀喜(巨人/選手)
2001年 若松 勉(ヤクルト/監督)
2002年 原 辰徳(巨人/監督)
2003年 王 貞治(ダイエー/監督)、星野仙一(阪神/監督)
2004年 伊東 勤(西武/監督)
2005年 ボビー・バレンタイン(ロッテ/監督)
2006年 王 貞治(ソフトバンク/監督)☆WBC優勝
2007年 落合博満(中日/監督)
2008年 渡辺久信(西武/監督)
2009年 原 辰徳(巨人/監督)☆WBC&日本シリーズ優勝
2010年 西村徳文(ロッテ/監督)
2011年 秋山幸二(ソフトバンク/監督)
2012年 原 辰徳(巨人/監督)、阿部慎之助(巨人/選手)
2013年 星野仙一(楽天/監督)
2014年 秋山幸二(ソフトバンク/監督)
2015年 工藤公康(ソフトバンク/監督)
2016年 栗山英樹(日本ハム/監督)
2017年 デニス・サファテ(ソフトバンク/選手)
受賞者を決めるのは、「正力松太郎賞委員会」。今年は王貞治氏が座長を努め、杉下茂氏、中西太氏、山本浩二氏というプロ野球OBのなかでも“レジェンド”級の3名と、『甲子園への遺言』や『神宮の奇跡』などを執筆したノンフィクション作家・門田隆将が務めた。
副賞もあり、受賞者には金メダルと賞金500万円が贈呈される。サファテは日本シリーズMVPの賞金600万円に続き、またしても臨時ボーナスを手にしたことになる。
「正力松太郎」ってどんな人?
最後に、正力松太郎氏の功績についても触れておきたい。
球界のOBというわけではなく、元々は警視庁に勤めており、警察署長にまで昇格した人物。しかし、警務部長の時に起こった虎ノ門事件を防ぐことができなかった責任を問われて懲戒免官となってしまう。
その後、経営不振に苦しんでいた読売新聞を買収して社長に就任。新聞界へ身を転じると、1934年にアメリカからメジャーリーグの選抜チームを日本に招待して、“日米野球”を興行。この時の日本選抜チームが後の大日本東京野球倶楽部、現在の読売ジャイアンツだ。ここから現在のプロ野球がはじまり、正力氏が“現代日本プロ野球の生みの親”と呼ばれる所以となっているのだ。
近年の受賞者を見ての通り、近年はすっかり“日本一監督の賞”として定着しかかっていた同賞。しかし、委員会はその“慣例”を打ち破り、大車輪の活躍でチームの日本一に貢献したサファテを選んだ。最終的には満場一致だったそうで、今年のプロ野球を見てきたファンもこの選考に異論を唱えることはないだろう。
これまで以上に話題を集めた今年の「正力松太郎賞」。潮目が変わったことにより、来季以降も注目を集めそうだ。