かつて戦力外となった男たち
11月15日、プロ野球・12球団合同トライアウトがマツダスタジアムで行われ、現役続行を目指す自由契約選手51名が参加した。
来季もプロ野球選手であるために、自分を売り込むサバイバルの場――。独特の緊張感に包まれたグラウンド内に参加選手が集合した時、ふと気がつくことがある。プロ野球12球団以外のユニフォームを身にまとう選手たちが混じっているのだ。
実はこのトライアウト、この秋に戦力外通告を受けた選手だけが参加しているわけではない。参加資格は「プロ野球球団を自由契約となった選手」となっており、中には2016年以前に戦力外となった選手たちもいる。
なので参加選手リストを見てみると、この秋に戦力外となった選手たちは「前○○」という形で所属が表記されているのに対し、2016年以降に戦力外となった選手たちは「元○○」とかつて所属した球団名が記されている。
今回は再びNPBの舞台に返り咲くことを目指した“元○○”選手たちに注目。今年の該当者は以下の通りだ。
【トライアウトに参加した“元○○”選手たち】
▼ 投手
巽 真悟(ソフトバンク/2009~2016)
加藤正志(楽天/2015~2016)
岩本 輝(阪神/2011~2016)
西村 憲(阪神/2009~2014)
長江翔太(巨人/2014~2016)
ラファエル・フェルナンデス(ヤクルト/2009〜2013)
▼ 外野手
金子将太(ソフトバンク/2015~2016)
通訳から選手復帰を目指した男
まず今年のトライアウトで一番にマウンドに登ったのが、かつてヤクルトに在籍したラファエル・フェルナンデス。ブラジル代表のユニフォームを着用して登板した。
母国のカントリーキッズ高を卒業してから来日し、白鴎大でプレー。4年間でリーグ戦は2勝に留まったが、最速151キロの速球が評価されて育成1位でヤクルトに入団。2011年には支配下登録を掴み取り、2012年には自己最多となる9試合の一軍登板を果たしたが、2013年は一軍登板ゼロ。オフに戦力外通告を受けた。
その後は母国ブラジルに戻って野球を続け、2015年には四国IL・愛媛に入団。再来日してNPB復帰を目指したものの、夢は叶わずオフには自由契約に。現役引退を余儀なくされると、なんと“通訳”という形で日本ハムからオファーが。まさかの転身でNPBへの返り咲きを果たしたものの、やはりもう一度選手として挑戦することを目指してトライアウトに臨んだ。
1ボール・1ストライクからはじまるシート打撃で打者4人と対戦し、結果は三振1つ含む被安打0と上々の投球を披露。笑顔でマウンドを降りた。
▼ ラファエル・フェルナンデス
vs.田代将太郎 右飛
vs.原 泉 見三振
vs.奥浪 鏡 三飛
vs.木村昇吾 三直
不屈の精神で挑み続ける男
かつて阪神でプレーした西村憲は、なんと今回が4年連続4度目のトライアウト受験となった。
阪神を自由契約となった2014年のオフにトライアウトを受験するも、獲得を希望するNPB球団はなし。翌年3月にBCリーグ・石川への入団すると、そのオフ、そしてその翌オフと続けてトライアウトに挑むも、ここでも声はかからず…。今年はリーグに新規参入した滋賀でプレーをし、4年連続となるトライアウトに挑んだ。
先頭の赤松(前オリックス)に安打を許すと、つづく脇本(前ロッテ)は四球。高橋(前巨人)にも安打を浴びてしまう。最後は赤坂(前中日)を二ゴロに仕留めたが、やや悔しさの残る結果となってしまった。
▼ 西村 憲
vs.赤松幸輔 右安
vs.脇本直人 四球
vs.高橋 洸 右安
vs.赤坂和幸 ニゴロ
ポジション転向で復帰を目指す
NPB時代と違うポジションでトライアウトに挑んだ男もいた。2014年から2016年まで巨人の育成選手だった長江翔太である。
高校3年時に投手へ転向し、大学時代は投手として活躍した長江。入団時は投手であったが、二軍戦でも登板がないまま1年目から外野手に転向。2015年には二軍で10試合に出場したが、支配下登録は掴めないまま2016年に自由契約となった。
トライアウトに参加するも声はかからず、今年はBCリーグ・富山でプレー。外野手としてシーズンを戦い、60試合で打率.217、9本塁打を記録したが。このトライアウトは投手として参戦した。
しかし、先頭から2者連続で四球を与えるなど、打者4人に対して3四球。アピールすることはできなかった。
▼ 長江翔太
vs.猪本健太郎 四球
vs.寺嶋寛大 四球
vs.古本武尊 空三振
vs.宇佐美塁大 四球