12球団Jr.初の女子主将 西武Jr.の蔵方菜央さん
円陣の中心でチームメイトをまとめるのは、埼玉西武ライオンズジュニア主将の蔵方菜央さん。12球団ジュニアで初めての女子キャプテンに任命された背番号「11」は、最速113キロを誇るサウスポー。「将来はマドンナジャパンのエースに」と夢を膨らませる少女が、12月27日に開幕する「NPB12球団ジュニアトーナメント2017 supported by 日能研」初優勝を目指し、闘志を燃やしている。
「NPB12球団ジュニアトーナメント」は、一般社団法人日本野球機構とプロ野球12球団が連携し、「子どもたちが“プロ野球への夢”という目標をより身近に持てるように」という考えのもとに企画され、2005年に始まった。各球団のOB監督の下、小学5、6年生で編成されたチームが12球団の頂点を目指す。
歴代の女子選手の中でNo.1
身長162センチ。その左腕から繰り出される直球の最速は113キロで、ライオンズジュニアの岡村隆則監督も「歴代の女子選手の中でNo.1。男子の中でやっていても遜色ない」と評す。
しかし、菜央さんが主将に選ばれた理由は技術だけではない。岡村監督は続ける。
「元気があって、積極的。練習では誰よりも先にグラウンドに来る。野球をしているときの目が“ギラギラ”していて。本当に野球が好きなことが伝わってくる」
そんな菜央さんに岡村監督は主将を打診。「(主将を)できるか」の質問に菜央さんは「できます!」と元気よく返事をしたという。
それでも、菜央さんに不安がなかったわけではない。これまで地域の女子チームでは主将を務めた経験があるが、各地から集められたチームの主将は「全然違う。最初は全く実感がなかった」と話す。就任すぐは女子ということで遠慮があり、立ち位置も難しかった。しかし、メンバーの支えもあり「大変だし、疲れるけど、すごく楽しい」と笑顔を見せる。
「胃が痛いです」と心配そうに見つめるのは父・基(もとい)さん。一方で、「本人はすごく野球が好きみたいで、楽しそうにやっている。初の女子主将ということで、見ているこっちが緊張しますが、うまくチームをまとめていってほしい」と期待を込める。
将来はマドンナジャパンのエースに
菜央さんは、3歳上の兄の影響で4歳のころ野球を始めた。土日は毎週バットとグローブを持ち、野球に没頭。野球以外にもサッカーや水泳など様々なスポーツをやってきたというが、「野球が一番好き」と今後は野球一本で進むことを選んだ。
自らの性格を“熱い”と分析。「三振を取ったとき『ヨッシャー』って叫ぶんです。それがすごく気持ちよくて。練習がきつければきついほど頑張れる。きつい練習を乗り越えて、良い結果が出た時は、やってよかったなって」
背番号「11」は、憧れのダルビッシュ有投手が長年背負ってきた番号と同じ。「地元のチームで『11』をつけているんですが、ライオンズジュニアでも『11』をもらいました」と嬉しそうに背中を指す。「浅村(栄斗)選手(西武)、中田(翔)選手(日本ハム)、筒香(嘉智)選手(DeNA)も好きです。勝負師の目がたまらない。試合中は何をしていてもかっこいいし、つらい時の支えになってくれます」と目を輝かせた。
将来の夢は日本女子野球代表マドンナジャパンのエース。「まずは女子プロ野球の選手になること。そして(女子野球日本代表)マドンナジャパンのエースになりたい」。さらに続ける。「その後は指導者になって、教え子をプロにしたい。自分がプロ野球選手になるという夢は終わってしまうけど、そうやって、教え子をプロにするという夢は一生続いていく」と未来予想図を楽しそうに語ってくれた。
父・基さんも「女子野球は門戸が広がった世界ではない。どこまでやれるかわからないが、応援していきたい」と背中を押す。
悲願の初優勝へ
モットーは「誰よりも声を出し、誰よりも先に行動する」こと。「パワーでは男子に負けてしまう。そういうところでアピールしないと」と菜央さん。課題は「マウンドで緊張してしまう」こと。「落ち着いて自分のプレーができるように」と言い聞かす。
普段は笑顔が素敵な女の子。ピーマンの肉詰めとけん玉、ドッジボールが好きなあどけなさの残る小学6年生。しかし、ひとたびグラウンドに出ると勝負師の顔を見せる。
「たくさんの応援がある中で、応援してくれている人たちの悔し涙は見たくない。嬉し涙を流してほしい。絶対に初優勝したい」
悲願の初優勝へ。12球団ジュニア初の女子主将は、その想いを白球に注ぎ込む。