増田
NICUを訪問した西武・増田達至
◆ 恩返し

 埼玉西武ライオンズの新選手会長に就任した増田達至が5日(火)、埼玉県立小児医療センター(埼玉県さいたま市)のNICU(新生児集中治療室)GCU(新生児治療回復室)小児病棟を慰問した。

清潔なユニフォーム姿でNICUへ
今回の訪問は、自身の子供がNICUにお世話になった経験から、NICU病棟や小児病棟に入院している子供や家族、病院のスタッフの力になりたいという増田の意向によって実現。約2時間にわたって、入院中の子供たちやその家族やスタッフの下を訪れ、多くの人たちに温かなエールを送った。

◆ 新たなモチベーション

NICUでは病院の医師や看護師が24時間体制で対応している
「少しでも恩返しができれば」。そう語っていた増田が最初に訪れたのは、「自分の子供もお世話になった」というNICU。新生児ということもあり、母子の負担になりすぎないようにと相手を気遣いながらも、一人ひとりに声をかけ、相手の話に耳を傾けた。

一人ひとりに声をかけて言葉を交わす
 中には手術を翌日に控える赤ちゃんもおり、お母さんから「手を握ってあげてほしい」と頼まれ、手術の成功を祈願する場面も。持参したライオンズのタオルや直筆のサイン入り選手カードを手渡すと、「(子供が)物心つくまで頑張っていただいて、カードを(子供に)見せたい」というメッセージが増田へ送られた。

 自分の子供に「投げている姿を見せたい」という思いはあったという増田も、今度は「(NICUで出会った子供たちに)投げているところを見せて、少しでも僕のことを覚えてもらえれば」と決意を新たにした様子。プロ野球選手として第一線で活躍し続ける“理由”が、また1つ増えた。

◆ 試合よりも緊張!?

 NICUとGCUの病棟を訪問した後には小児病棟に移動。一人ひとりのベッドを回りながら、記念撮影やサインに応じた。

 生まれて初めてのサインやプロ野球選手とのふれあいを喜ぶ子どももいれば、もらった選手カードの顔と実物のカードを見比べて本人かどうかを確認する子どもならではの可愛らしい姿も見られた。

着ているパーカーにもサイン
 その後、子どもたちが集まるプレイルームに移動すると、普段は3万人の前で堂々たるピッチングを披露している守護神が、数十人の児童とその家族が見守るなか、やや緊張した面持ちで登場。自己紹介の最後には、「顔を覚えてもらえるように頑張りたい」と笑いを誘いつつ子どもたちへ活躍を誓った。

やや緊張した面持ち!?で挨拶をする増田
 さらに、球団応援歌の合唱や、一人ひとりとボールを使ってコミュニケーションを図ると、子供たちの笑顔があふれだした。それを見守る家族、スタッフにも自然と笑顔がこぼれ、病棟全体が明るく和やかな雰囲気に包まれた。

照れながらも子供たちと球団応援歌を合唱
キャッチボールなどで子供たちとふれあう機会も
 子供たちの笑顔に増田も「照れながらでも笑顔をくれて、その笑顔に力をいただきました」とにこやかな表情を見せた。

ノートやボールにコップなど、子どもたちのリクエストに応え様々なものにサインをしていた
◆ 新選手会長としての決意

 励ましの意味も込めての訪問だったが、色々な境遇の方と出会い接するなかで「勇気づけられた」と語り、子どもたち・ご家族・病院スタッフの方の笑顔が溢れた今回のような活動を「今後もどんどんやっていきたい」と決意を新たにした新選手会長。また来年、胸を張って子供たちの前に姿を現すためにも、力強いピッチングを見せつけて優勝を達成したいところだ。

子どもたちの目線でふれあう増田
 来季は、“勝利の方程式”の一角として今季の躍進を支えたブライアン・シュリッターに加え、ポスティングによるMLB挑戦を目指す牧田和久もチームを去る可能性がある。そんな中、炭谷銀仁朗前選手会長から「新選手会長」の指名を受けた。

「今までは自分のことだけでしたけど、これからはチームのことも考えながらやっていかないといけない。今まで以上にしっかりとやっていかないといけないという自覚も出てきたし、今年以上に頑張っていきたい」

 そう語る増田の言葉には、期する思いと“熱”が感じられた。新たな力を得た守護神が、大きな期待を背に来季も9回のマウンドにあがる。

子どもや家族だけでなく、病院のスタッフとも打ち解けていた

文=平野由倫(ひらの・よしのり)

もっと読む