田沢純一,
マーリンズでプレーした田沢純一

◆ 初めてナ・リーグでプレーした田沢

 かつて上原浩治とともにボストン・レッドソックスで勝利の方程式を築いた田沢純一。今季はメジャー9年目で初めてレッドソックス以外のチームでプレーした。

 マイアミ・マーリンズでイチローと日本人タッグを組んだ田沢だったが、55試合に登板し、3勝5敗、防御率5.69という成績に終わり、期待を裏切った。特に制球に苦しみ、2年前は1点台(1.99)だった与四球率が自己ワーストとなる3.58まで悪化。成績改善には、制球難の克服が絶対条件となるだろう。

 また、奪三振率も大きく下げた。2016年までは、毎年のように9イニング当たり9個前後の三振を奪っていたが、今季は6.18まで大きく下げた。特にシーズン後半は5.57と低く、球威の衰えは明らかだった。

 田沢にとって渡米後で最も苦しいシーズンとなったが、中継ぎ投手として一つの大きな役割をこなした点は見逃せない。

 登板時に背負っていた走者を生還させた割合を示すIR%という指標がある。田沢は、2016年には22人の走者のうち14人を生還(63.6%)させてしまっていたが、今季は16人の走者を一人も生還させなかった(0%)。IR%は自身の防御率には影響しないため、見過ごされがちだが、救援投手を評価する指標として重宝されている。

 来季はマーリンズとの2年契約の2年目を迎える。チームは現在、ジャンカルロ・スタントンなど次々と主力選手を放出し、まさに再建途上。世界一を経験している田沢にとってモチベーションを保つことも難しいかもしれない。ただ、若いチームの中で、年齢的にも、実績的にも田沢には投手陣のリーダー的役割を求められるだろう。来季はナ・リーグの野球にも慣れ、完全復活する姿を見せることができるだろうか。

▼ 田沢純一
田沢純一,
生年月日:1986年6月6日(31歳)
身長/体重:180センチ/90キロ
投打:右投右打
ポジション:投手
経歴:横浜商大高-新日本石油ENEOS-レッドソックス(2009~2016)-マーリンズ
[今季成績] 55試 3勝5敗 奪三振38 防御率5.69
[通算成績] 357試 20勝25敗4セーブ 奪三振378 防御率3.90

文=八木遊(やぎ・ゆう)

【八木遊・プロフィール】 1976年、和歌山県出身。大学卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。日本にファンタジーベースボールを流行らせたいという構想を持ち続けている。

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