◆ 阪神を支えたJFK
野球というスポーツは「3」(もしくはその倍数)の数字を中心に成り立っている。ストライク3つで三振、アウト3つでイニング交代。3の3倍、9人が先発出場し、9イニングを戦う。クリーンアップは3人で構成され、一流打者の証しは打率3割だ。
有能な先発投手が3人集まれば、3本柱と言われる。リリーフ投手では、守護神1人とセットアッパー2人を合わせた3人が「勝利の方程式」と呼ばれることが多い(4人、5人の場合もあるが)。
今回はその“救援3本柱”を取り上げてみたい。2005年から08年ごろにかけて凄まじい活躍を見せた救援トリオがいた。阪神のJFK(ジェフ・ウィリアムス、藤川球児、久保田智之)である。それぞれの頭文字から語呂がよかったこともあり、当時はJFKという3文字がスポーツ紙などで頻繁に見られた。
JFKのピークは2007年。その年の守護神は藤川が務め、防御率1.63、そしてセ・リーグのシーズン記録となる46セーブを挙げた。久保田は、今も球史に残る90試合に登板して、55ホールドポイント、防御率1.75をマーク。ウィリアムスもリーグ2の43ホールドポイントを挙げ、防御率0.96は3人の中で最も良かった。
同時期には、ロッテのYFK(薮田安彦、藤田宗一、小林雅英)も活躍し、救援トリオによる「勝利の方程式」は、常勝チームに必要不可欠な要素として定着した。
◆ JFK後の方程式は?
その後、各球団が何パターンもの「勝利の方程式」を生み出してきたが、JFKを上回るインパクト(結果)は残せていない。2017年は同じ阪神のマテオ、ドリス、桑原謙太朗らが「勝利の方程式」を形成し、2位躍進の原動力となった。他には、広島の今村猛、中崎翔太、ジャクソンの3人も連覇の貴重なピースとなった。その広島を破り日本シリーズに進んだDeNAも山崎康晃、パットン、三上朋也らが活躍した。
パ・リーグでは、ソフトバンクのサファテ、岩嵜翔、森唯斗。楽天は、松井裕樹、福山博之、ハーマンらがシーズン前半の快進撃を支えた。
昨季活躍した5チームの15人の名前を挙げたが、左腕は楽天の松井だけだ。両リーグの救援投手を見ても、昨季20セーブ、もしくは20ホールド以上を記録したのは松井、宮西尚生(日本ハム)、岩瀬仁紀(中日)、砂田毅樹(DeNA)、そして高橋聡文(阪神)の5人だけ。JFKに匹敵するインパクトを残すには優秀な左腕の存在は必須だろう。
続いて、今季インパクトを残しそうな救援トリオを両リーグから1組ずつ取り上げたい。セ・リーグでは、DeNAの山崎、パットン、エスコバーに期待がかかる。特に昨季途中に加入したエスコバーがフルシーズン働くことができれば、セ・リーグ最強の救援トリオを形成してもおかしくないだろう。
パ・リーグからはオリックスの3人を取り上げたい。長年にわたって守護神を務めた平野佳寿のメジャー流出は痛手だが、日本ハムから加入した増井浩俊、2年目の黒木優太、そして左腕の山﨑福也に注目したい。山崎は先発ローテーション入りを目論むが、昨季の救援防御率は2.08(先発時は5.86)とブルペンでしっかり結果を残している。チーム事情にもよるが、リリーフでの起用がはまる可能性がありそうだ。
果たして、今季はJFKに匹敵するインパクトを残す新たな救援トリオ、勝利の方程式は生まれるだろうか。
文=八木遊(やぎ・ゆう)