◆ メジャー史に輝く「華麗なる一族」
2018年メジャーリーグの注目ポイントの一つが、常勝軍団ニューヨーク・ヤンキースの新指揮官に就任したアーロン・ブーン監督だ。2009年シーズン終了後に現役を引退し、長らくケーブルテレビ局の解説を務めていたが、今季からヤンキースで采配を振ることになった。
コーチやマイナーでの監督経験がなく、いきなりの監督就任はメジャーでは極めて珍しい。指導者としての下積みがない中で、ブーン監督はどのような手腕を発揮するのか、地元ニューヨークでの注目度も高い。
現地メジャーファンの間では、“ブーン”の知名度はかなり高い。というのも、祖父レイ、父ボブ、兄ブレットと、“ブーン一家”は3世代にわたりメジャーで活躍したからである(4人そろって野手としてプレーし、それぞれ通算1000安打以上記録している)。
さらにブレットの息子ジェイクも昨年のドラフトでワシントン・ナショナルズに指名された。結局大学への進学を選んだが、数年後には、4世代目となるメジャーリーガー誕生の可能性もある。“ブーン一家”はメジャー史に輝く「華麗なる一族」というわけだ。
実は父のボブもメジャーでの監督経験がある。1990年に現役を引退後、95年から97年途中までカンザスシティ・ロイヤルズで、2001年から03年までシンシナティ・レッズでそれぞれ指揮を執った。当時のロイヤルズとレッズはいずれも再建途上だったこともあり、勝ち越したシーズンは一度もなく、通算成績も371勝444敗(勝率.455)と監督として結果は残せなかった。
◆ 過去にも親子でメジャーの監督も
過去に親子でメジャーの監督を務めたのは3組いる。コニー・マック、アール・マック、ジョージ・シスラー、ディック・シスラー、そしてボブ・スキナー、ジョエル・スキナーである。
この中でコニー・マックの監督としての実績は群を抜いている。通算成績は、3731勝3948敗76分。負け越してはいるが、ワールドシリーズを5度制覇し、殿堂入りも果たした名将だ。
息子のアールは父が病気のため指揮を執れなかった1937年と39年のシーズン途中に代理監督を務め、通算45勝77敗3分、勝率.369という成績を残した。
イチローに破られるまでシーズン最多安打記録を保持していたジョージ・シスラーは、3シーズンで指揮を執り、通算218勝241敗3分と負け越し。息子ディックは、通算121勝94敗と勝ち越したものの、監督としては短命に終わり、晩年はセントルイス・カージナルスやニューヨーク・メッツで長らくコーチを務めた。
3組目の父ボブ・スキナーは、93勝123敗。息子ジョエルは、2002年途中からクリーブランド・インディアンスで暫定監督を務め35勝41敗といずれも負け越している。
これまでの3組はいずれも父親の方が多くの勝利を挙げている。ただし息子3人は、いずれも監督を務めた期間が短く、評価はしづらいところだ。
果たしてアーロンは、ヤンキースの監督として名を馳せることはできるのだろうか。
文=八木遊(やぎ・ゆう)