楽天・則本昂大

◆ 近年重要視される“本拠地開幕”

 先発投手にとっての栄誉であり、この時期の目標とされるのが“開幕投手”の座――。その大役を任されるということは、その年のチームの命運を握る存在であることを意味し、必勝を期した大事な試合を任される“エース”の証でもある。

 しかし、近年注目されているのが、「もうひとつの開幕戦」こと“本拠地開幕戦”だ。開幕戦を本拠地で迎えることができなかったチームのそこにかける熱量は年々上がってきており、ド派手なセレモニーを行ったり、ファンに向けて記念グッズを配布するなど、様々な工夫でファンを球場へと呼び込んでいる。

 そんな営業的な面もさることながら、長丁場のペナントレースを戦うチームにとっても大きな意味を持つ一戦だ。というのも、近年は金曜日の開幕が一般的となっており、となると開幕戦をビジターで迎えたチームの本拠地開幕戦は火曜日になることが多い。スタートは金曜日であるが、シーズンを通して考えると火~日の6連戦がメインとなり、火曜日の方が“初戦”としての意味合いが強くなる。

 星勘定していくうえで、やはり初戦を取りたいというのはどの監督も共通の想いだろう。そのため、シーズンを占う開幕戦はもちろんのこと、“火曜日”のゲームに重きを置く考え方も増えてきているのだ。

◆ 開幕投手が貫禄を見せた2017年

 どちらもカード頭となるだけに、力のある投手が担当することは間違いない。ということで、今回は各球団の過去3年間の開幕投手と本拠地開幕投手に注目し、両者を並べて比較してみた。まずは昨季から。

▼ 2017年
<パ・リーグ>
・西武
開幕戦:菊池雄星=26試 16勝6敗 防1.97
本拠地:多和田真三郎=16試 5勝5敗 防3.44

・楽天
開幕戦:美馬 学=26試 11勝8敗 防3.26
本拠地:則本昂大=25試 15勝7敗 防2.57

・ロッテ
開幕戦:涌井秀章=25試 5勝11敗 防3.99
本拠地:石川 歩=16試 3勝11敗 防5.09

※除外=開幕戦が本拠地:日本ハム、オリックス、ソフトバンク

<セ・リーグ>
・中日
開幕戦:大野雄大=24試 7勝8敗 防4.02
本拠地:若松駿太=7試 1勝4敗 防5.55

・DeNA
開幕戦:石田健大=18試 6勝6敗 防3.40
本拠地:今永昇太=24試 11勝7敗 防2.98

・阪神
開幕戦:メッセンジャー=22試 11勝5敗 防2.39
本拠地:藤浪晋太郎=11試 3勝5敗 防4.12

※除外=開幕戦が本拠地:巨人、ヤクルト、広島

 開幕戦を敵地で迎えた6球団のうち、本拠地開幕投手の方が良い成績を収めたチームは2つ。楽天とDeNAだった。

 楽天は則本が直前までWBCに参戦していたこともあって開幕戦を回避。さらに岸孝之の体調不良もあって、美馬に大役が回ってきた。則本はさすがの成績を残したが、美馬も2ケタ・11勝をマークするなど奮闘を見せている。

◆ 2016年は開幕投手受難の年…?

▼ 2016年
<パ・リーグ>
・ソフトバンク
開幕戦:摂津 正=7試 2勝2敗 防5.59
本拠地:和田 毅=24試 15勝5敗 防3.04

・オリックス
開幕戦:金子千尋=24試 7勝9敗 防3.83
本拠地:西 勇輝=26試 10勝12敗 防4.14

・日本ハム
開幕戦:大谷翔平=21試 10勝4敗 防1.86
本拠地:吉川光夫=27試 7勝6敗 防4.19

※除外=開幕戦が本拠地:楽天、西武、ロッテ

<セ・リーグ>
・ヤクルト
開幕戦:小川泰弘=25試 8勝9敗 防4.50
本拠地:館山昌平=10試 1勝4敗 防7.24

・中日
開幕戦:大野雄大=19試 7勝10敗 防3.54
本拠地:若松駿太=19試 7勝8敗 防4.06

・DeNA
開幕戦:井納翔一=23試 7勝11敗 防3.50
本拠地:今永昇太=22試 8勝9敗 防2.93

※除外=開幕戦が本拠地:巨人、阪神、広島

 2016年は半数の3チームで本拠地開幕投手が開幕投手よりも多くの勝利を挙げるなど、開幕投手の方が苦しい結果に。特にソフトバンクでは摂津がシーズン2勝に留まった一方、本拠地開幕投手を務めた和田は15勝を挙げる大活躍。勝ち星で13もの差がついた。

 開幕投手では、日本ハム・大谷がなんとか10勝。この年は二刀流フル回転でチームの大逆転優勝に大きく貢献。チームの大黒柱として意地を見せた。

◆ 開幕投手が優勢

▼ 2015年
<パ・リーグ>
・楽天
開幕戦:則本昂大=28試 10勝11敗 防2.91
本拠地:塩見貴洋=16試 3勝5敗 防3.56

・オリックス
開幕戦:ディクソン=20試 9勝9敗 防2.48
本拠地:西 勇輝=24試 10勝6敗 防2.38

・ロッテ
開幕戦:涌井秀章=28試 15勝9敗 防3.39
本拠地:石川 歩=27試 12勝12敗 防3.27

※除外=開幕戦が本拠地:日本ハム、西武、ソフトバンク

<セ・リーグ>
・DeNA
開幕戦:久保康友=21試 8勝7敗 防4.12
本拠地:井納翔一=21試 5勝8敗 防3.27

・中日
開幕戦:山井大介=33試 4勝12敗 防3.92
本拠地:大野雄大=28試 11勝10敗 防2.52

・ヤクルト
開幕戦:小川泰弘=27試 11勝8敗 防3.11
本拠地:成瀬善久=14試 3勝8敗 防4.76

※除外=開幕戦が本拠地:巨人、阪神、広島

 2015年は開幕投手の4勝:本拠地開幕投手の2勝という結果に。巨人と広島は3年連続で開幕戦をホームで行っていたため、残る10球団での比較となるが、3年間の通算では開幕投手の10勝:本拠地開幕投手は7勝、同数が1という結果になった。

 過去3年では開幕投手が意地を見せる結果になったが、果たして今年はどうなるか。開幕投手だけでなく、“本拠地開幕投手”からも目が離せない。

文=福嶌弘(ふくしま・ひろし)

【福嶌弘・プロフィール】 1986年、神奈川県生まれ。バイク・クルマの雑誌の編集部を経て2015年からフリーライターに。父が歌う「闘魂込めて」を聴いて育ったため、横浜出身ながら生来の巨人ファン。『甲子園名門野球部の練習法』(宝島社)『プロ野球2017 シーズン大展望』(洋泉社)、『がっつり!プロ野球』(日本文芸社)などに執筆。

この記事を書いたのは

ベースボールキング編集部

ベースボールキング編集部 の記事をもっと見る

もっと読む