堂々たる甲子園デビュー
阪神の開幕ローテ争いに、新たな楽しみが加わった。
メッセンジャー、秋山拓巳、能見篤史という当確ライン以外、復活を目指す藤浪晋太郎を含め、先発ローテーションの枠は未定となっている阪神。オープン戦が始まると、才木浩人や小野泰己ら若き力が猛烈なアピールを見せる中、3月11日の巨人戦では、ドラフト2位の“ルーキー”高橋遥人が堂々たるピッチングを披露。3回1失点と上々の本拠地デビューを飾った。
初回こそ不運な当たりもあって失点を喫するも、2回以降は最速147キロのストレートを軸に、打者6人を凡退に抑えるパーフェクトなピッチング。金本知憲監督もキャンプでべた褒めした、スピンの効いたボールが冴え渡る。
ストレートはコントロールの精度も高く、右打者に対してはアウトコース高めのストレートで手を出させず優位なカウントにしていき、左打者に対してはインコース低めのストレートで踏み込ませない。
なかでも圧巻だったのは、3回二死からのゲレーロに対するピッチングだ。チェンジアップやスライダーに手を出さないゲレーロに対し、アウトコースのストレートで勝負していくと、最後は押し込んでセカンドゴロに打ちとった。
左腕エースとしての期待
常葉学園橘に在籍した高校2年以来となる甲子園のマウンドだったが、巨人の錚々たる面子相手に堂々たるピッチングを披露。プロとして聖地に帰ってきたことを実感したことだろう。
安芸での二軍キャンプでは、あえてコントロールを気にせず腕の振りを意識してきたというルーキー。左腕をしなやかに振り下ろすスリークォーターのフォームは、“左の岩隈久志”とも評されるダイヤの原石だ。また、その背番号「29」といえば、かつて井川慶も背負ったタイガース伝統のサウスポーの印でもある。
5日のソフトバンク戦を2回無失点、そして11日の巨人戦は3回1失点と、ここまでは能見篤史や岩貞祐太以上の仕上がりと言っても過言ではない内容。今年31歳の27歳になる岩貞以降の世代の先発左腕が不足しているだけに、先発ローテ入りにも期待がかかる。
能見二世と言われてきた新人左腕は過去にもいたが、高橋遥人にはその能見すら脅かす存在になってもらいたい。
文=弥武芳郎(やぶ・よしろう)