大歓声がどよめきに変わる
4月3日に神宮球場で行われたヤクルト-広島の1回戦。ヤクルトのとってのホーム開幕戦は、青木宣親にとって日本球界復帰後初めてのホームゲーム(公式戦)でもあった。
1回裏、その瞬間は訪れる。二死一塁で打順は4番の青木。待ちわびたファンの大声援と、この日入場者に配られた「お帰り!」ボードでスタンドが埋め尽くされる最高の空気感のなか、お馴染みの応援歌のファンファーレが鳴り響く。久しぶりに聞く変わらぬメロディーだが、歌詞は一新されているらしい。
そんなことを考えながら見ていると、1ストライクから広島先発・薮田和樹が投じた2球目は一直線に青木の背中付近へ。倒れ込む背番号23の姿に、歓声がどよめきに変わる。さすがに痛そうな素振りは見せるが、すぐに立ち上がって一塁へと歩き出す姿を見て、ライトスタンドからは「がんばれ!がんばれ!青木」のコールが湧き上がった。
そういえば開幕戦でも…
デジャヴだった。
3月30日(金)のこと。待ちに待ったプロ野球の開幕戦の日。ヤクルト・青木宣親にとってはNPB復帰後初めての公式戦だ。「4番・中堅」でスタメン出場した男の第1打席は、1回表の一死一・二塁というチャンスで巡ってくる。
お馴染みのファンファーレが横浜スタジアムのレフトスタンドから流れ、大歓声に包まれる球場。もしかしたら、DeNAファンの中にも青木の姿を見られる喜びを感じている人がいたかもしれない。
その直後、1ストライクからの2球目。DeNAの先発・石田健大が速球で果敢に内を突くも、これがさらに内に入って青木の肘へ直撃。プロテクターの軽い音とともにボールは足元に転がった。
NPB復帰後初打席も、NPB復帰後ホーム初打席も死球。なんとも“痛”烈な歓迎を受けることになった。
もともと死球の多い選手
青木の「死球3」は12球団トップの数字。4試合で3死球ということは、単純計算でシーズン107死球ペースということになる。ちなみに、シーズン死球の最多記録は、2007年にグレッグ・ラロッカ(当時オリックス)が記録した28となっている。
実はもともと死球の多かった選手で、現役選手による通算死球のランキングでは第7位にランクイン。なお、これはNPB時代のみの計算で、日米通算にすると一気に3位までジャンプアップする。
【現役選手・通算死球ランキング】
1位 146個 阿部慎之助(巨人/2094試合)
2位 130個 中島宏之(オリックス/1565試合)
3位 96個 渡辺直人(楽天/1048試合)
4位 93個 福浦和也(ロッテ/2156試合)
5位 90個 糸井嘉男(阪神/1283試合)
6位 76個 中村剛也(西武/1436試合)
7位 74個 青木宣親(ヤクルト/989試合) ※日米通算だと122個(1747試合)
8位 73個 今江年晶(楽天/1553試合)
9位 71個 新井貴浩(広島/2320試合)
10位 68個 栗山 巧(西武/1611試合)
※数字はすべて4月3日現在
トップ10のなかで、出場試合が4ケタに満たないのは青木だけ。そのペースの早さがお分かりいただけるだろう。
思えば、メジャー時代にはそのアクロバティックな避け方や当たった時の叫び声の大きさが話題を集め、MLB公式で「青木の死球シーン特集」が組まれたほど。ボールをバットに引き寄せる技術も群を抜いているが、そのなかでボールを体にも引き寄せてしまう不思議な力も発揮している。
死球をとれば当然塁に出ることができるため、チームへの貢献にはなる。しかし、ヤクルトと言えば毎年のように故障者に悩まされてきたチームだけに、ファンとしては心配や不安の方が大きいだろう。
昨年球団ワーストの黒星を更新してしまった古巣に帰ってきたヒーロー。救世主として大きな期待を受ける復帰1年目のシーズンだけに、どうにか無事にシーズンを戦い抜いてもらいたいところだ。