デビュー戦を終え、安堵の表情を見せたフレディ・ペラルタ

◆ 衝撃のメジャーデビュー

 現地時間5月13日(日本時間14日)、コロラド州デンバーで行われたブリュワーズ対ロッキーズの一戦。ブリュワーズが7-0とリードした6回、一死一塁の場面。この日メジャーデビューを飾ったブリュワーズの先発フレディ・ペラルタは、昨季の首位打者で今季もここまで11本塁打を放っているロッキーズの3番チャーリー・ブラックモンから見逃しの三振を奪う。

 ここでクレイグ・カウンセル監督がマウンドに歩み寄り、大役が果たされたことを告げられると、それまで硬かった表情を緩ませ、グラブを2度叩き、空を見つめた。

 「やった!僕はここ(メジャーリーグ)でやったんだ!」

 心の中で叫び、思わず涙が溢れた。

 5回と2/3を投げて許した安打はわずかに1本。2四球、13奪三振で無失点という圧巻のデビュー。しかも、『MLB.com』によると98球のうち実に90球がフォーシーム。本人いわくそのうち1球はチェンジアップだったようだが、その他はファストボールか握りを変えてカッター気味に投げたもの。速球以外はカーブを8球だけと、ほぼ2球種で快投を演じたのだ。

◆ チャンスは突然に…

 本当はその前日、同じコロラド州で行われた3Aの試合で登板する予定だったペラルタ。ところが、ブリュワーズの先発予定だったチェイス・アンダーソンが食中毒のため登板出来なくなり、試合開始直前に急遽メジャー昇格を知らされる。

 実はこの時、ペラルタの両親が母国のドミニカ共和国からはるばるやって来ていた。アメリカのプロリーグでプレーする我が子の姿を見るために。ところが、彼の両親と、両親と一緒に来たガールフレンドが見ることになったのは、メジャーデビューという思いもよらない晴れ舞台だった。

 「初回は緊張した」と言う。その言葉の通り、最初の打者にいきなり3ボールを与えた。しかし、その後の3球をストライクで見逃し三振を奪い、後続を内野ゴロと空振り三振に仕留めると、次第に落ち着きを取り戻す。

 「自分の持っているものを見せてやるという気持ちになった」とペラルタ。安打を許さずに三振の山を築き、なんと6回一死までノーヒットの12奪三振。つづくデビッド・ダールに内角低めのコーナーぎりぎりのところに投げたチェンジアップ(※『MLB.com』の記録ではファストボール)をセンター前に打ち返されたが、続くブラックモンを三振に仕留めたところで、この日の任務を終えた。

 『Baseball-Reference』の記録によると、メジャーデビュー戦での13奪三振というのは1908年以降で見ると史上5人目で、14奪三振を奪った2010年のスティーブン・ストラスバーグ(ナショナルズ)以来の快挙だという。

◆ 母国の英雄へのあこがれ

 「母の日に最高のプレゼントが出来た」。偉業の2日後、ベビーフェイスの21歳は興奮冷めやらぬ様子で振り返る。

 小さい頃からペドロ・マルチネスに憧れていた。「彼のビデオは何度も見た。投球はもちろん、インタビューもたくさん見てきた。彼は僕の永遠のヒーローだ」。20歳でメジャーデビューを果たし、37歳まで現役を続けた母国の大投手のどこが好きか尋ねると、「フォームも好きだけど、一番好きなのは投げている時の顔。彼は投げている時、怒っているように見える。でも怒っていない。戦っている。その表情が好きなんだ」と微笑んだ。

 2013年にアマチュア・フリーエージェントとしてマリナーズと契約したあとは、絶対にメジャーリーグに上がると決めていた。「そのために毎日一生懸命に頑張ったし、ゲームをリスペクトしてきたし、人間として立派になろうと努力してきた」。技術以外も磨いてこそ、メジャーリーガーになれると信じてきたことを明かした。

 ペラルタは現地19日(日本時間20日)のツインズ戦でキャリア2度目の先発のマウンドに上がる。もし好投を続けたとしても、アンダーソンが戻って来ればメジャーに残れるという保証はない。しかし、たとえ3Aに戻ることになったとしても、大舞台で得た経験は大きな自信となって今後に繋がっていく。

 そして、なによりもペラルタを動機づけること。それは「立派なメジャーリーガーとなって、いつかペドロに会い、ペドロのように長いキャリアを送る」という夢だ。

 それまでは「すべてが教育課程」と話すペラルタ。何事も向上への糧として前進を続けていくだけだ。

文=山脇明子(やまわき・あきこ)

【山脇明子・プロフィール】
ロサンゼルス在住。1995年に渡米、現在は通信社の通信員として、MLB、NBAを中心に取材を行っている。

この記事を書いたのは

山脇明子

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