苦戦が続くホワイトソックス

◆ 地区全チームが借金…!?

 各チームがまもなく50試合に到達しようというメジャーリーグ。今年のアメリカン・リーグでは、はやくも“二極化”の傾向が強くなってきている。

 東地区のヤンキース(31-13/勝率.705)やレッドソックス(32-15/勝率.618)、西地区のアストロズ(30-18/勝率.625)といった前評判の高かったチームが予想通りに好調。勝率6割を超えるペースで白星を積み上げている一方、中地区のホワイトソックス(13-31/勝率.295)はメジャーワーストの勝率に低迷しており、ロイヤルズ(14-33/勝率.298)と同リーグに勝率3割を切るチームが2つもあるのだ。

 ちなみに、1963年以降の55年間において、勝率3割未満でシーズンを終えたのは2003年のタイガースだけ。ホワイトソックスとロイヤルズは“歴史的”レベルの低迷といえる。

 ここで、そんな2チームが属しているア・リーグ中地区の順位表を見てみよう。(※現地21日終了時点)

【ア・リーグ中地区順位表】
1位 .489 インディアンス(22勝23敗)
2位 .465 ツインズ(20勝23敗)
3位 .426 タイガース(20勝27敗)
4位 .298 ロイヤルズ(14勝33敗)
5位 .295 ホワイトソックス(13勝31敗)
※現地時間5月21日終了時点

 低迷している2チームだけでなく、全チームが苦戦。なんと地区首位に立つインディアンスですら借金生活という惨状なのだ。

 もともと開幕前はインディアンスの評価が高く、アストロズやヤンキースと並ぶリーグ優勝候補のひとつだった。ところが、なかなか調子が上がってきていない。最終的にはインディアンスが抜け出す可能性が高いとみられるが、借金を背負ったままの地区優勝という可能性もゼロではない。

◆ 勝率5割未満のチームによる優勝はない

 長い歴史を誇るメジャーリーグでも、借金を背負ったチームによる地区優勝は過去に一度もない。史上最も勝率が低い地区優勝と言うと、2005年のパドレスが記録した.506というものだ。

 この時のパドレスは残り6試合の時点で77勝79敗と2つの借金を抱えていたが、その後を5勝1敗で乗り切ってシーズン勝ち越しに成功。それでも、年によってはワイルドカードにも届かないかも知れない勝率である。

 さらにその11年前、1994年にも勝率5割未満のチームによる地区制覇が実現しかけたことがあった。各リーグ2地区制から3地区制に再編された初年度のア・リーグ西地区は、現在より1チーム少ない4チームによる戦い。その年の順位が以下の通り。

【1994ア・リーグ西地区順位表】
1位 .456 レンジャーズ(52勝62敗)
2位 .447 アスレチックス(51勝63敗)
3位 .438 マリナーズ(49勝63敗)
4位 .409 エンゼルス(47勝68敗)

 なんと、全4チームが借金10以上を抱えてフィニッシュ。ただし、この年は選手会によるストライキがあって8月にシーズンが中断。選手会側と経営者側の交渉は決裂し、そのままシーズンは打ち切りという形で終了した。もしストライキがなければ、史上初の負け越しチームによる地区優勝があったかもしれない。

 ちなみに、日本でも負け越したチームのリーグ優勝は例がない。しかし、2015年に7月上旬の時点でセ・リーグ全6球団が借金を抱えたことはあった。そのシーズンは最終的にヤクルトが抜け出し、貯金を11まで伸ばしてリーグ優勝を果たしている。

 果たして、ア・リーグ中地区の今後はいかに…?

文=八木遊(やぎ・ゆう)

【八木遊・プロフィール】
1976年、和歌山県出身。大学卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。日本にファンタジーベースボールを流行らせたいという構想を持ち続けている

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