ニュース 2018.07.16. 11:30

ジャイアンツの「4番」打者~選ばれし者たちの戦い

巨人の新4番・岡本和真


今週はジャイアンツの4番バッターということで、お話していきたいと思います。

5月の末から6月にかけて調子を落としたゲレーロとマギーに代わり、6月2日のオリックス戦から高橋由伸監督は、4年目の岡本和真をジャイアンツの第89代4番バッターに抜擢。何とか突破口を見出そうと、試合に臨んでいます。

他のナインからは「岡本、お前4番なんて簡単に打てないよ。凄い重圧でプレッシャーがかかるとみんな言っているよ」と言われたみたいですね。

この試合、私は京セラドームに行っていなかったので、4番岡本という4番バッターの誕生を目の当たりにすることは出来なかったのですが、なんとこのゲームでオリックスの山岡から、京セラドームのレフトスタンドへ度胸の良さを見せるホームランを放ちました。


4番で苦しんだ松井秀喜


やはり1番印象に残っているジャイアンツの4番バッター誕生は、1996年、平成8年、第62代4番バッター・松井秀喜です。

この年、長嶋監督は勝利と育成ということをテーマに、ペナントレースをスタートしました。松井4番バッター構想を掲げてこれが4年目になりました。何とか同年中に松井を4番にしようと思って、スタートしたわけです。

本来、松井の4番構想というのは、1000日構想を立てた長嶋監督ですが、まだこの年は少し早いかなぁという感じだったんですね。しかし、キャンプから松井は絶好調で、第62代4番バッターにどうだろうかと期待がかかっていました。

しかし、4番を松井にするかどうか、ミスターの口は堅かった。というより、どうでしょう。あの時、口が堅いというよりも決心がつかなかったんじゃないかと思います。松井を4番にするのか、誰もスクープ出来ない。何とかそれをスクープしようと、記者は本当に長嶋監督の後をつけ回したんです。

そして、1996年の東京ドームで行われた阪神との開幕戦。注目のスターティングメンバーが発表された時に球場は、特に新聞記者席は固唾を呑んでこの放送を聞いていたんです。

1番セカンド・仁志、2番ショート・川相、3番センター・マック、ここで球場では何とも言えないざわめきが起こります。4番ライト・松井、アナウンス嬢の声も何か上擦っているような感じがして、ドームはこの声を聞いて割れんばかりの大歓声が上がりました。その後、5番ファースト・落合、ここでもまた何とも言えないどよめきが起こりました。

ミスターは1996年、平成8年のオープニングゲーム、阪神戦で松井秀喜を4番に起用して、今年は何が何でも4番松井にする。その強い意志を開幕ゲームで見せたわけです。


5番・落合博満の意地


5番に降格した落合博満はゲーム後、「俺が4番打っている間は、本当に強い巨人ではないんだ。ぜひ松井に頑張ってもらって、俺はバックアップする、何でもするぞ」と話しておりましたけれど、これは落合博満、全くの嘘でした。

実は落合博満はキャンプで、「まだ松井に4番を打たせることは出来ない。それは彼の素質の問題ではないんだ。よーく見ていると、オレが思い描いている4番バッターとは大分イメージが違う。何が違うか、簡単に言うとどうだろうなぁ。あいつにはまだオーラがないんだ」と言って盛んに松井の4番を否定していました。

この年、落合のコンディションは最高で、松井を見下ろすようなキャンプを送っていたわけですね。落合は、「ゲームに出る以上、オレが4番バッター」というのは落合の考えですから、松井にそろそろなんて、どこにもなかったんです。

開幕第1戦、1回の裏、松井はピッチャーゴロで、二死二、三塁と、ランナーを残してベンチに下がります。で、5番・落合の登場で、なんとここで落合は2点タイムリーを打って格の違いを見せつけました。

この日の松井は5打数1安打、ボテボテの内野安打が1本だけ。4番戦争も実は落合と松井は大人と子どもの差があるなぁと、その日に限っては感じたゲームだったんですね。

4月が終わった時点で松井が4番で19試合に出場して、打率.286、4本塁打、7打点。一方落合は5番で同じく19試合に出場して、打率.354、5本塁打、19打点。まさにもう天と地の違いがありました。松井の不振で4月の巨人は7勝12敗とスタートダッシュに失敗して、大きくつまずきます。

<1996年4月の成績>
松井秀喜:19試合 打率.286 本塁打4 打点7
落合博満:19試合 打率.354 本塁打5 打点19


4番・落合で“メイクドラマ”を完成


5月1日から3番松井、4番落合。遂に長嶋監督は、たまりかねて打順を元に戻して再スタートします。打順を変更、これが成功して8月21日ジャイアンツは遂に首位に立ちます。

実はこの年、首位広島に一時11.5ゲーム差をつけられましたが、「メイクドラマ」という有名な長嶋さんの名台詞ありましたね。メイクドラマによって77勝53敗で、第2次長嶋政権。2度目の優勝を飾るわけですが、これはやはり途中から4番に戻った落合のバッティングが非常に大きかったと思います。

ただ数字では松井が3番バッターとして打率.314、落合が4番として打率.301。ホームランは松井が38本、落合はホームラン21本、打点は松井が99、落合が86。

すべての点で松井が落合の数字を上回って、この年なんと松井が最優秀選手に選ばれました。ただ貫禄というかチームでの存在に、落合との違うところがあって、最終的には長嶋監督は落合のお陰で優勝出来た、ということを言うわけですが、なかなか4番に入るっていうことは難しいんですね。


岡本は松井以上!?


このように、松井秀喜さんでさえプレッシャーに苦しんで、ジャイアンツの4番という座を守ることが出来なかった。この時と今は周りの雰囲気は違うとはいえ、岡本和真が何事もなかったように、次の日から急に第89代の巨人の4番に座り、それで打ちまくっている。巨人の新しい大黒柱として、文句のないところだと思います。

岡本の進撃、あるいは巨人の進撃に、それがそのまま繋がるのかどうか。岡本は4番バッターとして交流戦で打率.314、3本塁打、10打点。4番に打順が変わっても打ち続けています。

勝負強くチームの先頭に立てる男、という雰囲気が出て参りました。打撃に決定的な欠点がありません。当たれば飛ぶという長打力があります。

相手に対してファイティングポーズをとるということは、彼の性格上できないんですが、キャリアを積んでいけばそういうことも出来ると思います。長打力がある、色んなことで条件が揃っております。度胸の良さでは、あれは松井秀喜さん以上かもしれません。
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