◆ 驚異的な“勝ち運”
月が変わって8月、いよいよ勝負の夏場がやってきたプロ野球。日本一連覇を目指したソフトバンクは相次ぐ故障者にも悩まされて思わぬ苦戦。7月を終えた段階で順位こそ3位も、88試合を消化して43勝44敗1分の借金1とらしくない姿を見せている。
どうにか流れを変えたい8月…。その大事な最初の試合で先発を託されるのが大竹耕太郎。7月30日に支配下登録を受けたばかりという育成出身の23歳ルーキーだ。
熊本・済々黌高時代に2度の甲子園出場経験があり、そこから名門・早稲田大へと進学。大学でも主戦投手として神宮を沸かせた男だったが、学年が上がるにつれて苦しい投球が増えたこともあり、“プロ一本”と決めて挑んだ2017年秋のドラフト会議ではなかなか名前が呼ばれず。その瞬間が訪れたのは「育成ドラフト」の4巡目だった。
毎年のようにプロ野球選手を輩出している名門校だけに、「育成」での指名は極めて珍しい例だったが、“プロ一本”だった男は迷わずに入団を決意。子供のころから好きだったという地元・九州のホークスで戦うことを選ぶ。
プロ入り後は1年目からファームで出場機会を掴むと、ここまで22試合の登板で8勝負けなし1セーブ、防御率は1.87という圧巻の成績。リリーフがメインながらリーグトップの8勝を挙げている。特に57回2/3を投げて四死球が11と大崩れしない制球力が魅力で、それでいて三振は34個をマーク。6月はリーグトップタイの3勝を記録して「スカパー!ファーム月間MVP賞」も受賞した。
◆ 今季左腕の先発がなかったソフトバンク
支配下登録から中1日、いきなりプロ初登板・初先発という大役を任される23歳。過去に育成ドラフトの出身者でプロ初登板・初先発・初勝利を挙げた投手はおらず、いきなり史上初の快挙がかかるマウンドになる。
また、今季のソフトバンクは和田毅が故障で離脱を強いられている状況もあって、開幕から88試合連続で右投手が先発登板。このまま予定通りに大竹が先発マウンドに登れば、今季89試合目にして初めての“先発・左腕”ということにもなる。
チームの左腕による先発は、昨年9月26日のロッテ戦で登板した和田毅が最後。先発左腕による勝利も昨年9月10日の同じくロッテ戦・和田毅までさかのぼる。和田といえば大竹が“憧れ”と口にする存在であり、早稲田大からホークスという同じ道を辿ってきた大先輩だ。
憧れの先輩以来となる白星を挙げ、チームの窮地を救うことができるか…。大竹耕太郎のデビュー戦に注目が集まる。