歯車が噛み合いだした巨人
8月に入り、セ・リーグの順位争いが俄然激しくなってきた。首位の広島は完全に抜けだしたものの、2位の巨人から最下位のDeNAまではわずか4ゲーム差。まだまだCS出場における安全圏のチームはない。
そのなかで、先週は巨人が好調だった。7月31日には内海哲也が自身4年ぶりとなる完封勝利をマーク。その翌日には吉川光夫が好投を見せると、2日後にはメルセデスが2失点完投勝利。8月5日には今村信貴がプロ入り初完封を無四球で達成し、この週を5勝1敗として、2位に浮上した。ケガ人こそいるものの、ここにきてようやく巨人の歯車が噛み合いだしてきた感じがある。
昨シーズン、2006年以来11年ぶりにBクラス転落となった巨人はオフに、西武で二桁勝利を挙げた野上亮磨、中日で本塁打王のタイトルを獲得したゲレーロを、それぞれFAで獲得し、Aクラス復帰に向けて準備を進めてきた。しかし、皮肉なことに両選手はここまで結果を残すことができず、戦力になっているとは言いがたい状況だ。
大砲候補として期待していたゲレーロは、打撃不振もあり6月半ばに二軍へ降格。すでに2カ月近く経っているが、ファームでは、打率.222、1本塁打、2打点と結果を残せておらず、現時点で再昇格の見込みはない。野上も5月末に抹消されてから調整を経て後半戦に戻ってきたが、当初期待されていた先発としてではなく中継ぎとしての起用となっている。復帰後は4試合に登板したが、7月22日と同24日に2試合連続で失点を喫しており、首脳陣の信頼を得るまでには至っていないというのが正直なところだろう。
若手と自前獲得の外国人選手が躍進
一方で巨人の若手を見渡すと、序盤から4番に定着した岡本和真(2014年ドラフト1位)の本塁打数はすでに20本に到達。高卒4年目までの20本塁打は、巨人において2010年の坂本勇人以来8年ぶりだ。2年目の吉川尚輝(2016年同1位)は、骨折で離脱してしまったものの、それまで二遊間の守備でチームに貢献してきた。また、陽岱鋼に代わって「1番・中堅」に抜擢されている3年目の重信慎之介(2015年同2位)も、出場試合数は「26」と少ないものの打率.333、リードオフマンの役割を果たしている。
外国人選手を見ても、枠の影響で開幕二軍スタートだったヤングマンは骨折で離脱するまで3勝1敗。育成から這い上がってきたメルセデスは初登板から25イニング連続無失点を記録するなど、4試合で3勝0敗、防御率0.62と結果を残し、先発ローテに欠かせない存在へとなりつつある。メルセデスと同じく育成から支配下登録されたアダメスも中継ぎとして結果を残すと、マシソンの離脱や澤村拓一の不振を受け、クローザーに抜擢されている。
今季を振り返ってみると、いまの巨人を支えているのは大型補強で獲得した選手ではなく、近年のドラフト上位指名選手や、自前で獲得した外国人選手たちだ。
先日、渡辺恒雄・読売新聞グループ本社代表取締役主筆は、高橋由伸監督に対し一定の評価を与えつつ、「もっと強化しないと、圧倒的に勝つようにね」とオフの大型補強を示唆するコメントを残した。このオフには浅村栄斗(西武)、丸佳浩(広島)、西勇輝(オリックス)といった有力選手がFA市場に出てくる可能性もある。渡辺主筆の言葉通りなら、FA選手の補強へと動くことになるが、現時点の巨人は、若手、そして自前の外国人選手らの起用がうまくハマっている部分もある。
この流れのなかで、巨人はオフの補強でどのように動いてくるのだろうか――。大型補強か、それとも両方を並行して進めていくのか。短期的な補強では本当に強いチームはできない。もちろんそれは巨人が一番よくわかっていることでもあるだろう。今オフの動きも気になるところだが、まずは残り43試合、熾烈な順位争いと共に、今後の方針を左右しかねないチーム内の競争にも注目だ。
※数字は2018年8月5日終了時点