旋風の中心に絶対的エース
間もなく第100回全国高校野球選手権大会の決勝戦がはじまる。
その決勝戦を前に注目を集めているのが、秋田県勢としては1915年(第1回大会)の秋田中以来103年ぶり、農業高校としては1931年(17回大会)に準優勝した台湾代表の嘉義農林以来87年ぶりの快挙を成し遂げた金足農。同校には東北勢初の全国制覇の期待もかかる。
旋風を巻き起こしているチームの中心にいるのが、エースの吉田輝星だ。金足農は秋田予選から9人のスタメンを一人も替えることなく地方予選から勝ち上がり、特に消耗の激しい投手も吉田ひとり。甲子園では準決勝までの5試合全てで完投し、45回(749球)を投げて10失点。ひとりでマウンドを守り続け、チームをけん引してきた。
▼ 吉田のここまで
8日 1回戦:鹿児島実 9回 157球 1失点 14K
14日 2回戦:大垣日大 9回 154球 3失点 13K
17日 3回戦:横 浜 9回 164球 4失点 14K
18日 準々決:近 江 9回 140球 2失点 10K
20日 準 決:日 大 三 9回 134球 1失点 7K
松坂大輔・田中将大超え
秋田県予選における1試合の平均奪三振数が「11」を超える吉田は甲子園の舞台でも大暴れ。初戦では150キロに迫る速球を中心に14奪三振の衝撃デビューを飾ると、2回戦では13個、3回戦でも14個、準々決勝では10個の三振を奪い、4試合連続で2桁奪三振を記録。斎藤佑樹(早稲田実/06年)、松井裕樹(桐光学園/12年)らの持つ大会記録に並んだ。
準決勝の日大三戦では7奪三振で大会新記録の5試合連続とはならなかったが、今大会を通して積み上げた58個の奪三振数は、平成の怪物・松坂大輔(横浜/1988年)、田中将大(駒大苫小牧/2006年)が記録した53個を上回る。
一大会での奪三振記録は板東英二(徳島商)が1958年(40回大会)に記録した83個が歴代最多で、2位の斎藤佑樹は78個。いずれも延長戦や再試合を含めての数字であり、いずれの記録にも届きそうにはないが、68個で3位の松井裕樹までは「10」と、トップ3入りの期待がかかる。
▼ 大会奪三振記録トップ5
83個/6試62回 板東英二(徳島商 /58年)
78個/7試69回 斎藤佑樹(早稲田実/06年)
68個/4試36回 松井裕樹(桐光学園/12年)
65個/5試41.2回 辻内崇伸(大阪桐蔭/05年)
64個/4試36回 楠本 保(明石中 /32年)
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58個/5試45回 吉田輝星(金足農 /18年)
決勝戦で激突するのは“2度目の春夏連覇”を目指す大阪桐蔭。目指す先にあるのは、奪三振数ではなく、優勝の二文字であることは間違いない。しかし、“最強世代”ともいわれる大阪桐蔭の打線を相手にどのようなピッチングを披露し、どれだけの三振を奪うのかも気になるところ。優勝旗の行方と共に、吉田の奪三振数にも注目したい。